男と女の東京ミステリー Vol.27

女子大生とドライブデート中の29歳外資系証券マン。彼女が懇願した目的地にドン引きし…

人の心は単純ではない。

たとえ友情や恋愛感情によって結ばれている相手でも、時に意見は食い違い、衝突が起きる。

軋轢や確執のなかで、感情は歪められ、別の形を成していく――。

これは、複雑怪奇な人間心理が生み出した、ミステリアスな物語。

▶前回:宅飲みで寝落ちした28歳男。深夜に目を覚ますと、大切な彼女が男友達と寄り添っていて…


視野の広さは【前編】


「おい、琴音。もっと周りを見て運転しないと、事故るぞ」

助手席に座る健史は、運転席でハンドルを握る恋人に注意を促す。

「大丈夫だって」

琴音は、何食わぬ顔で運転を続ける。

先日、琴音から「ドライブに行こう」と誘いを受けた。

「私が運転したい」

琴音がそう言うので、健史は車を貸して運転も行き先も任せたのだ。

ただ、琴音は免許取得後、さほど運転の経験がないため、いささか心もとない。

琴音は、私立大学に通う4年生。

健史はその7歳上になる。

出会ったのは、2ヶ月ほど前に開かれた飲み会。

健史は、勤めている外資系証券会社の同僚に誘われ、参加した。

ブランド力を感じる女子大生が相手ということもあり、同僚たちの意気はあがっていた。

実際、集まった女性たちは若く溌剌としていて、30代を目前に控えた男たちの目には輝いて映る。

だが、4人いる女性のうちのひとり、琴音だけは、どうも様子が違った。

はしゃぐでも、黙るでもなく、控えめに立ち振る舞い、周囲とうまく波長を合わせていたのだ。

世の中を達観したような、大人びた雰囲気を醸し出す琴音に惹かれ、健史のほうから誘い、交際が始まった。

「ほら琴音。あの人、危ないよ。クラクション鳴らしな」

進行方向前方に、歩きスマホをしている男性がいる。歩道から車道へと、足をはみ出して歩いていた。

琴音が指示に従いクラクションを鳴らすと、男性は慌てて歩道に戻る。

「そうそう。危ないときはちゃんとクラクションも使わないと」

「でも今の人、歩道に戻った結果、フードデリバリーの自転車にぶつかりそうになってたよ」

「それは自分が悪いんだよ」

琴音とはだいぶ年齢差があるが、彼女はしっかりした性格。普段は、健史のほうが年下のように扱われることが多かった。

それゆえ、運転中に指導できることが、健史には少し心地よく感じられる。

この記事へのコメント

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No Name
和実のお墓に行くのか? 琴音と和実は姉妹で。
2024/01/18 05:1549返信7件
No Name
琴音が実は存在しない? お墓参りは琴音自身のだったり? とか色々怖い予想しても、来週の後編は全然面白くないのがこの連載。
2024/01/18 05:1131返信3件
No Name
よく普段運転しない人に車貸せるなぁ。しかも首都高。首都高運転できるって、実は琴音普段運転してるんじゃないの?
2024/01/18 06:2130
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