
歩くだけの価値アリ。名店の茶懐石でほっくりランチ
サンユウウキョ
三友居 高輪店
季節を表現する茶懐石の真骨頂
美術館や庭園が点在する高輪界隈は、緑豊かな都会のオアシス。新緑萌えるこれからの季節、散歩がてらに食べ歩きを楽しむには、まさに絶好のシチュエーションだろう。白金台駅からのんびりと歩くこと15分余り。鬱蒼とした木々に囲まれた『八芳園』や、明治学院大学の由緒ある建物を横目にしながら坂道を行けば、庶民的な街並みの中、やがて『三友居』と染められた粋な暖簾が現れる。
周囲の雰囲気とは一線を画す、その風情漂う落ち着いた佇まいも、京都・銀閣寺畔に本店を構える茶懐石の名店と聞けば、合点がいく。本来は、出張料理が専門の同店ゆえ、イートインのスペースがあるのは、去年の6月にオープンしたこの高輪店のみ。茶懐石ならではの、けれんみの無い実のある料理がなんといっても持ち味だ。
春なら鯛に筍、夏は鱧、そして秋には松茸というように四季折々の旬の素材をコースの主役に据え、調理法や味付けによって、味わいに変化をつける。緩急自在なコースの流れも実に見事だ。
例えば、写真のランチコース。前菜、大菜、小菜と3皿に亘り、筍が登場しているにもかかわらず、前菜では、筍をさっと炙って木の芽味噌を添え、旬の香りと食感を演出する。かと思えば、続く大菜は鍋仕立て。鯛の旨みと共に出汁ではんなりと煮含めた筍の旬の滋味を楽しませてくれる。そして最後の小菜では、なんと筍をすりおろし、ヒロウスに仕上げる手のかけよう。ホロホロと口中で解ける筍は、そのほのかな甘みと共に、ひと味違う筍の魅力を披露してくれる……といった按配だ。
同じ筍を用いながらも、各々、異なる持ち味を表現し、舌を飽きさせない。しかも、余計な飾りつけ、味付けは一切なし。いずれも、筍本来の豊かな大地の味をじんわりと引き出している。この筍を始め、店で扱う食材は、魚も野菜もほぼすべて京都から。それゆえ、予約は2日前までに。
また、弁当類のテイクアウトもあり、こちらも予約は3日前までに。野点をイメージした花籠弁当を緑豊かな公園で楽しむのも一興では?