30.5歳~女たちの分岐点~ Vol.8

元ゴールドマン・サックス谷内侑希子。30歳からの“強みを生かした”異業種転職キャリア論

「30.5」歳、それは女性がキャリアチェンジする平均年齢だ。

それまでをどう生きるかで、その後の人生が変わると言っても過言ではないだろう。

本連載ではインタビューを通して、今活躍中の女性たちが30.5歳のときに何をしていたのか。また、そこに至るまでのキャリアを振り返り、何を考え、どう行動してきたのかを掘り下げていく。

今回は、株式会社WRAY代表取締役の谷内侑希子さんが登場。新卒でゴールドマン・サックスに入社後、ちょうど30.5歳の時に異業種への転職を経験。35歳で、女性のセルフケアを中心としたブランド「WRAY(レイ)」を立ち上げる。

彼女は30.5歳までをどう生き、その後どんな道を歩んだのだろうか。

谷内侑希子さんの「30.5歳」に迫る。


取材・文/坂井あやの
撮影/長尾真志


▶前回:「サイバーエージェント退職は怖かったけど…」玉田理沙があえて“3年先の人生設計をしない”理由

今回、お話を聞いたのは谷内侑希子さん


1984年生まれ、大阪府出身の39歳。祖母、母ともに経営者の家庭で育つ。

早稲田大学商学部を卒業し、ゴールドマン・サックス証券に入社。メリルリンチ日本証券(現「BofA証券」)への転職を経て夫のロンドン転勤に帯同。帰国後は、YCP Holdings(現「YCP Solidiance」)に参画し、スキンケアブランドのマーケティングを担当。

同傘下のN&O Life(現「SOLIA」)取締役、ファッションPRマーケティング会社ステディスタディ経営企画室室長を経て2020年に独立。女性向けのセルフケア商品を開発・販売するブランド「WRAY(レイ)」を立ち上げる。

プライベートでは3児の母で、現在は夫の赴任先のオランダ・アムステルダムと日本の二拠点生活を送っている。


「WRAY」公式Instagram:@wray.jp
「WRAY」公式HP:https://wray.jp/
谷内侑希子Instagram:@yuccoxx

●INDEX

1.外資系金融を経て、今は海外生活と起業家を両立し日々奮闘

2.「座っているだけでマイナス」。悔しい経験が原動力に

3.独立してわかった起業家のリアルな「孤独」

4.20代でやるべきことは「言語化できる」強みをたくさん増やす


外資系金融を経て、今は海外生活と起業家を両立し日々奮闘


―― 現在、女性向けセルフケアブランド「WRAY」を立ち上げ、起業家として活躍されていますが、キャリアのスタートは外資系金融企業の最大手「ゴールドマン・サックス」に勤めるバリキャリ女子だったそうですね。


早稲田大学を卒業して新卒で「ゴールドマン・サックス」(以降GS)に入社し、金融法人営業部に所属していました。銀行や生命保険会社に、金融商品や金融取引を提案する仕事ですね。

27歳の時、上司の転職に伴って「メリルリンチ日本証券」(現「BofA証券」)に私も転職。その上司にはとても恩があったし、一緒に働きたかったのでついて行きました。

―― 20代で大手外資系企業に就職しエリート街道を邁進してきた谷内さんですが、キャリアの転換期となったのはいつですか?


転職して1年後、28歳の時、夫のロンドン転勤が決まりました。夫だけ単身赴任するという選択もあったので、まずは、日本に残ってこのままこの会社でキャリアを積んでいくことを想像してみたんです。

そうしたら、それは私の歩みたい人生とは違うかもしれないと感じて。ちょうど妊娠中で第一子が産まれるタイミングとも被っていて、産休もあるのでひと呼吸置くために、一度リセットしようと。

キャリアチェンジじゃなくて、「ライフスタイルをチェンジしたい時期」とちょうど重なったんです。

―― 築き上げてきたキャリアを捨てる未練はなかったのですか?


それまでは会社の待遇に不満もなく、仕事のやりがいもありました。でも、ずっとキャリアを積む未来がイメージできなかった。

自分がどうなりたいかを考え、それに向けて自分で決断をするという、今の“キャリア思考”を築くきっかけとなった大きな転換機だったと思います。


―― では、谷内さんの「30.5歳」はどんなタイミングでしたか?


夫と共にロンドンから帰国して、日本で仕事復帰した時期ですね。

YCP Holdings(現「YCP Solidiance」)傘下のN&O Life(現「SOLIA」)に入社しスキンケアブランドの開発やマーケティングを担当していました。

―― これまでの金融業とは全く違う業種を選んだ理由とは?


身近な人がマーケティングの世界にいたことで、業界理解が早かったことが大きいです。

仕事の話をよく聞いていたし、私の性格を知っていて「ゆっこはマーケティングに向いてるよ」って言われたり、マーケティングの世界で生かせる私の強みを教えてくれたり。そんな周囲の言葉にも背中を押されました。

―― 30.5歳を超えてから、新たな業界でチャレンジしたのですね。怖さや不安はなかったのですか?


今でもよく色んな方から「異業種への転職ってどうやったんですか?」って相談されるんです。

これまで扱っていた金融商品と、コスメやアパレルは同じ軸で話せるものでもない。今までとは違う世界に飛び込んだので、現在の私では考えられないですが、採用条件を交渉する場で「未経験だしな…」と弱気になったこともありました。

そしてその後も、縁があってファッション業界のPR会社で経営企画として働いて。

今思い返すとそれぞれ未経験だから怖いというより、チャレンジしてみたいという前向きな気持ちが強かったですね。

私のキャリアって異色とよく言われるんですけど、実際、ファッション業界にも金融業界にも私みたいな経歴を持つ人は少なくて。

だからこそ、違う視点でマーケティングできることが私の強みになったし、今につながる大きな“点”になりました。


輝かしくキャリアをスタートさせた20代を経て、ロンドンで一度は専業主婦になり出産・子育てを経験。帰国後もコスメブランドの立ち上げや、有名アパレルPR会社で経営企画を務めた谷内さん。

仕事もプライベートも両立させる憧れの生活を送る彼女だが、華やかな経歴の裏には、いくつもの試練があった。

それをどう乗り越え、今のたくましくポジティブな谷内さんへと成長させたのだろうか?


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