2023.12.08
ハイスペヒストリー Vol.7東京で綺羅星のごとく光を放つ「ハイスペック」な男女たち。
得てして、世間は彼らの結果や手にするお金ばかりに注目しがちだ。
しかし、今に辿り着くまでのルーツを探ると、我々にも応用できる「成功」の秘訣が見えてくるのではないか。
当連載は、そうした目的に沿ってハイスペ男女たちのルーツを辿っていく。まさに発見に満ちたノンフィクション・ドキュメンタリーだ。
取材・文/風間文子
▶前回:外コン勤務で多数の資格を持つ才女(29歳)。母親が小・中学校あえて公立に通わせたワケ
今回取材に協力してくれたのは、“社会人野球のスター軍団”と称される「トヨタ自動車硬式野球部」で内野手として活躍した沓掛祥和さんだ。
彼は現役時代、本塁打王、打点王、ベストナインなど、数々の個人タイトルを総なめにし、社会人の侍ジャパンにも選出され、4番打者として活躍した。
選手を引退した現在は、起業家・福山敦士氏が代表取締役を務める「株式会社マネーボール」のCOOに就任。プロ野球独立チーム「香川オリーブガイナーズ」の上場を視野に入れた球団経営に携わっている。
まずは、そんな沓掛さんの人生年表を見てみよう。
年表をみると、野球に人生を捧げてきたと言っても過言ではない。
野球選手を引退してから今の地位を築くまで、どんなストーリーがあったのか。
早速見ていこう。
祥和さんの野球人生は4歳から始まる。
「僕には6歳上の兄がいて、当時住んでいた地域のリトルリーグに入っていたんです。そして僕は母に連れられ、よく兄の練習を眺めていた。それが僕と野球との出会いですね。
以来、現役を引退するまでの20年以上、野球一筋でした。おかげで人並み以上に胆力は身についたと思います」
慶應義塾高校にはAO推薦で入学し、慶應義塾大学の野球部時代には東京六大学選抜の1人にも選ばれた。
トヨタ自動車を退職して3ヶ月が経った後には、自身の野球哲学や上達法を本として出版するために奔走する。
そうして形になったのが『マン振り思考 -生意気小僧の僕が野球で本気になれたワケ-』(東洋館出版社)だった。
その一方で、祥和さんは著書出版の際にアドバイスをくれた起業家・福山敦士氏が当時関わっていた会社「DORIRU株式会社(旧ギグセールス株式会社)」の仕事を手伝うようになるが…。
このとき、祥和さんは参画してわずか数ヶ月の短期間で営業成績トップの結果を残す。それまで野球一筋で、営業経験は皆無に等しいにもかかわらずだ。
「意外なことに、ビジネスと僕が野球でやってきたことには似ているところがあって、目的は違っても考えることは一緒だったんです。
たとえば、営業代行の仕事でなかなかアポが取れないとき。こういうときは、打率が上がらないときに考えていたことと非常に似ていました。僕の場合、がむしゃらに素振りの練習をするのではなく、まずは原因を探るんです。
営業においても同じで、ターゲットが悪いのか、自分のトークや切り返しがいけないのか、まずは原因を探る。その際に意識するのが、できるだけ問題点を俯瞰して、原因をシンプルに把握すること。そのうえで戦略を練る。
野球でもビジネスにおいても『木を見て森を見ず』が一番良くないと思っています」
時には、身近にいる「できる人」のやり方を観察し、自分にも取り込める要素はないかと分析したりもしたという。
祥和さんのCOOとしての現在は、こうした物事を俯瞰的に考える癖や客観的な分析能力を買われてのことのようだ。
では、トヨタ退職直後の3ヶ月間は何をしていたのかと聞くと「実家でニートをしながら親孝行をしていた」と笑いながら言う。
祥和さんの実家は神奈川県横浜市にあり、父親は今年4月に野村不動産ホールディングス(以下、野村不動産HD)の取締役会長に就任した沓掛英二氏、その人である。
一体、どんな幼少期を過ごしたのか。早速、祥和さんのルーツを辿ってみよう。
祥和さんは父親のことを「非常に勉強熱心で、今時のデジタル系にも果敢に挑戦するタイプ」だと語る。
「感心させられるのは、まずは自分でいろいろ試してみて、わからないことがあれば相手が息子だろうが何だろうが、丁寧に教えてほしいとお願いできること。
父の、そうした変なプライドに囚われない貪欲さや柔軟性、素直に人に向き合うところは大いに影響を受けていますね」
「ただ…」と言葉を詰まらせ、祥和さんは少し困った顔を浮かべる。
何か、まずい事情でもあるのだろうか。
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