オトナの5分読書 Vol.12

人生100年時代。どうせ長生きするなら、思いっきり楽しみたい人が今からできるコトとは

3. お金に換算できないモノ(無形資産)こそ大事


寿命が延びれば、長時間働かなくてはならないし、貯蓄もたくさんしなければならない。働き方も今とは大きく変わる。

一言で言えば、人生100年時代がもたらす未来とはこういうものだ。

しかし、お金だけ見ていては、人生を見誤ってしまう。

長寿がもたらす恩恵は、目に見えないものにもある。具体的なお金に換算できない要素、つまり手で触れることのできない資産(無形資産)こそが大事になってくる

「よき人生」とは優しい家族やすばらしい友人、高度なスキルと知識、肉体的・精神的な健康などに恵まれた人生のこと。これらはすべて無形資産だ。

お金が重要じゃないと言っているわけではないし、無形資産と有形資産を完全に切り離せるわけではない。むしろ、有形資産と無形資産は密接に絡み合っている。

強力なスキルや知識という無形資産がなければ、仕事で成功し、たくさんのお金(有形の資産)を稼ぐことができない。友だちのネットワーク(無形資産)をもっていることが、人生の途中で生き方や働き方を変えたり、仕事の選択肢を拡げたりするうえでとても重要だ。

自分自身が健康を害したり、家庭生活が不幸せだったりすれば、そのストレスにより仕事場での生産性、共感能力、創造性が大きく損なわれる。

お金が無形資産を増やすのに役立つし、無形資産が金銭的な資産を支える面もある。

人生100年時代に、重要となってくる無形資産を3つのカテゴリーに分類してみた。


①生産性資産


生産性資産とは、仕事の生産性を高め、所得とキャリアを向上させるのに役立つ資産のこと

最もわかりやすい生産性資産は、長年かけて身につけた「スキルと知識」だ。

そして、「仲間」もまた生産性資産の1つだ。

学力は個人で伸ばすものだと思っているかもしれないが、周囲の環境も無視できない。

どのように勉強しどのくらい成績を伸ばすことができるかは、先生や友だちによっても決まってくる。就職してからもこのような人間関係は生産性資産の獲得において重要だ。

②活力資産


よい人生を送るために何が必要か。健康・友人・愛を挙げる人が多い。このような要素を「活力資産」と呼ぶ。この活力資産は、私たちに幸福感と充実感をもたらし、やる気を掻き立て、前向きな気持ちにさせてくれる。

活力資産を維持するためには、まず健康に気をつけなければならない。これから先の長寿時代には、健康の価値がいっそう大きくなる。

また、友人関係も大事だ。自分と同じ考えをもつ仕事仲間は、生産性を維持する助けになる。

一方で、精神の健康と幸福感を維持し、活力資産を形成する点で役立つのは親しい友人のネットワークだ。それは私たちに心の支えと安らぎをもたらしてくれる。


人生100年時代には、こうした感情のこもった強い友情関係を維持することは、いっそう難しくなる。

長い人生で多くの転機(転職や引っ越し)を経ればアイデンティティの意識が変わり友人との絆が弱まったり、断ち切られたりするからだ。

でも、だからこそこれらの無形資産を大事にすべきである。

③変身資産


前述したように「教育→仕事→引退生活」という3ステージの生き方が難しくなり、マルチステージになると、人生の途中で新しいステージへの移行をうまく成功させるための意思と能力が必要になる

これが、変身資産だ

例えば、勤労期間が増えることにより、スキルの学び直しをしたり、勤務先だけではなく主職種を変える柔軟性も必要だ。

自分の「変身」を成功させるためには、自分についての理解が必要不可欠だ。これまで何をしてきたか、これから何をしようとしているかがアイデンティティをつくる。

自分のことをよく理解するには、ほかの人たちに意見を求め、それについて深く考えなければならない。

変身資産を積極的に築こうとする人がほかの人と違うのは、単に情報を得るだけではなく、自己認識と世界に対する見方を変更できる点だ。

自分についての理解が広く深くなれば、転職などにともなう不確実性に対処する能力が高まる。



人生100年時代、政府、企業、教育期間がいつも的確に応援してくれるとは限らない。

一人ひとりが自分の目や耳でしっかり社会を見渡し、革新的な取り組みを探す必要がある。そのような新しい生き方が強く求められる時代が訪れつつある。

これからは、誰もが過去の世代とは異なる思考と行動をしなければならなくなる。思考と行動を変えようとしない人は、様変わりする世界、大きく変貌をとげつつある世界に対応することができないだろう。

4. 本書のココがすごい!


今回紹介した、『16歳からのライフ・シフト』リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著(東洋経済新報社)のすごいところは下記に集約される。

①本書には1998年生まれの翔太と葵のほかに、1971年生まれ、1945年生まれのロールモデルも登場し、具体的なライフプランが描かれているので、どの世代が読んでも参考になる。

②日本の最新データも入っており、人生100年時代の未来がより自分ごと化できる。

③将来を見据えて行動すること、自分が変化することの重要性が書かれており、読んだ後行動したくなる。

【著者】

リンダ・グラットン

ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授。世界経済フォーラムの「新しい教育と仕事のアジェンダに関する評議会」責任者。世界で最も権威ある経営思想家ランキングであるThinkers50のトップ15にランクイン。「人生100年時代」の提唱者として2018年には「人生100年時代構想会議」のメンバーに任命された。

アンドリュー・スコット

ロンドン・ビジネス・スクール経済学教授、スタンフォード大学ロンジェビティ(長寿)センター・コンサルティング・スカラー。企業や政府機関の役員、顧問、英国予算責任局のアドバイザリーボードと英国内閣府の栄誉委員会のメンバーも務める。

*本書は、リンダ・グラットン&アンドリュー・スコット著『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』を基に、著者の許可を得て、学生向けに読みやすさを考慮して要約・編集し、「問い」などが新たに加えられたものです。

【監修】

宮田純也

一般社団法人未来の先生フォーラム代表理事。早稲田大学高等学院、早稲田大学教育学部教育学科教育学専攻教育学専修卒業、早稲田大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)。 日本最大級の教育イベント「未来の先生フォーラム」創設や2億7100万円の奨学金設立など、様々な教育に関する企画や新規事業を実施。 株式会社未来の学校教育 代表取締役などを務める。


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