あなたとのDistance Vol.9

大親友の彼氏と結婚した女。「略奪したわけじゃない」と言い訳しつつも、合わせる顔がなく…

モノが溢れているこの時代に、あえて“モノ”をプレゼントしなくてもいいんじゃない?と言う人もいるかもしれないけど…。

自分のために、あれこれ考えてくれた時間も含めて、やっぱり嬉しい。

プレゼントには、人と人の距離を縮める不思議な効果がある。

あなたは、大切な人に何をプレゼントしますか?

▶前回:結婚報告をSNSに載せたら、女友達にブロックされて…。久々に再会した彼女に言われた辛すぎる一言


萌花(32歳)「覚えてる?あの頃の私たち」


「今週末、実家に行こうと思うんだけど」

夫の信彦に言われ、萌花は食事の手を止めた。

いつもそうだ。萌花が乗り気にならない話は、たいがい2人で食事をしている時に切り出される。

時間をかけて夫の好きなタンシチューを仕込み、夕飯に出したことを、萌香は少し後悔した。

「先月顔出したばかりじゃない」

遠回しに断ってみる。

「まあ、いいじゃない。母さんも萌花の顔を見たがってる」

実家の両親とすでに約束しているのだろう。こういうとき、萌花の意思が尊重されることはない。

萌花は信彦と2人暮らし。

28歳で結婚し、結婚生活はもうすぐ4年目に入ろうとしている。2歳上の信彦は、ここ十数年で急成長を遂げたIT企業に勤め、一般のサラリーマンに比べかなりの高収入だ。

子どもはいない。

欲しいとは思っているが、授からないまま今に至る。

横浜の山手にある信彦の実家には、月に一度は顔を出している。その度に、「孫の顔が見たい」と言われるのが、最近の萌花には少々辛いのだ。

「だって、孫の顔が見たいって、お義母さんそればっかなんだもん…」

見せられるものなら見せたいと思う。それは信彦だって同じはずだ。

「気にしなければいい。悪気があるわけじゃないから」

信彦は言うけれど、義母に言われるのはいつも萌花の方だ。

世間一般的に、信彦はいい夫だと思う。

しかし、子どもを授かることが目標になりつつある今。結婚前のような楽しさは、2人の生活から少しずつ目減りしていくばかりだ。

信彦のために生活を完璧に整えたい。早く子どもも欲しい。

そう思って結婚退職し、専業主婦になったのに…。

この記事へのコメント

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No Name
こういうのって、信彦が悪い気がしてならない。
2023/11/18 05:3880返信5件
No Name
これは略奪とまでは言えないにしても後ろめたい気持ちにはなるよね。お互いに思ってる事を素直に言えて良かったと思った。
更に半年後、萌香は離婚してるだろうな。
2023/11/18 05:4260
No Name
由梨は、信彦と別れて本当に良かったと思っているかも知れない。マザコン気味で妻を守ることもせず、不妊検査もしないような男だからね。

萌花と由梨の友情が復活したことで、萌花の視野が広くなったのもいい。
2023/11/18 05:5739
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