30.5歳。
それは多くの女性がキャリアチェンジを迎える平均年齢だ。その頃をどう生きるかで、続く人生が変わると言っても過言ではないだろう。
本連載では、今活躍中の女性たちが30.5歳の時に何をしていたのかインタビュー。また、そこに至るまでのキャリアを尋ね、何を考え、どう行動してきたのかを掘り下げていく。
今回は、ウエディングプランナー・ライフスタイルプロデューサーとして活躍する黒沢祐子さんが登場。業界最大手のクルマメーカーに新卒入社後、25歳でキャリアチェンジし、27歳から今の職に就く。港区生活を卒業した現在は鎌倉暮らし。
彼女は30.5歳までをどう生き、その後、どんな道を歩んだのだろうか?
取材・文/大石智子
▶前回:「総合商社でエリート街道を歩むつもりが…」堀口ミイナが気づいた“大企業での安定”よりも大切なもの
1976年生まれ、東京都出身の47歳。都内の大学を卒業後、自動車メーカーに就職。その3年後、ホテルやレストランを展開する会社、株式会社Plan・Do・Seeに入社し、ウエディングプランナーに転身。
2008年、32歳でフリーランスとして始動。2016年、40歳になるタイミングで株式会社YUKOWEDDINGを設立。コロナ禍を経て鎌倉へ移住し、現在はウエディング&ライフスタイルプロデューサーとして活躍。
インテリアコーディネートも担い、洋服のコラボレーションも行う。現在までウエディングは1,000組以上の式を手がけてきた。
未経験で飛び込んだ、憧れのウエディング業界
―― 社会人として働き始めた頃のことを教えてください。
大学を卒業して最初は自動車の会社に就職しました。きっかけは、あまりよくないんですけど、大手だったので入ろうかなと…成り行きでしたね。
トヨタ系のディーラーに、3年ぐらい勤めていました。
―― ウエディング業界へ転職するきっかけは?
当時の会社でお付き合いをしていた1歳上の同期の男性と、24歳の時に婚約したのですが、結婚式が近づくにつれ価値観の違いに当たってしまい。入籍を延期することも考えましたが、新婚旅行から戻りお別れとなりました。
でも、自分が花嫁になり、結婚というものに初めてきちんと向き合ったことで思ったんです。
自分だったら、結婚するふたりの背景をもっと知ってから結婚式の提案をするのになとか、思うことがたくさんあって。ウエディングプランナーを目指すことになりました。
―― 転職のプロセスを教えてください。
3年間は同じ仕事を続けようと思っていたので、3年経った25歳で自動車メーカーを退社しました。自分は背水の陣が好きなタイプで、転職の準備は何もせず、まず先に退職届を出して(笑)。
その後、転職雑誌を見ていたら、Plan・Do・See代表の野田豊加さんが出ていて、「私、この人とこの会社で働きたいな」と直感で思ったんですね。
でも、採用の番号に電話しても常に留守電。朝昼晩とかけ続けてやっと連絡がついて、人事の方が「とりあえずしつこいから会わなきゃ」みたいになり、私の情熱をぶつけて採用になりました。
―― 実際に入社してみていかがでしたか?
最初は代官山でウエディングを担当していたのですが、1ヶ月後に秘書を任され、2年ぐらい野田代表の秘書をしていました。当時、秘書だった方が妊娠して急遽私が代わることになったんです。
私はサポートするより前に出るタイプなのではっきり断ったのですが…、最終的には一度秘書をやろうと決めて。ウエディングプランナーとして本格的に働きだしたのは2年後の27歳の時でした。
―― 遠回りの時間があったんですね。憧れのウエディングプランナーになれた今、仕事で重要視していることとは?
ビジュアル的なセンスはあって然るべき。でも、それよりも、相手のお話をどれだけ聞いて、その言葉を形に変換できるか、よりふたりらしい提案ができるかが重要な仕事だと思います。
―― 思い出に残っている結婚式のエピソードはありますか?
私がお手伝いしたカップルはもうトータルで1,000組は超えるので、いっぱいありますね。例えば、私が27歳の時にお手伝いしたご夫婦とは今でも家族ぐるみで仲良しです。
私と同世代のドクター同士のご夫婦で、これまでいっぱい結婚式に参加する機会があったなかでも、「やっぱり自分たちの結婚式が一番よかった」と20年経った今も言ってくれます。
すごく嬉しいですし、この仕事をしている価値だなって思いますね。
―― どのような式だったんですか?
一軒家で行った80人ほどのアットホームな式でした。ホテルで厳かにというより大きな飲み会みたいな雰囲気で、みんなの笑顔がプリズムみたいにずっと私の残像に残っています。
サプライズとか派手なことも素敵だと思いますが、その式みたいに、いかに新郎新婦とゲストの心に残るウエディングを作れるかを一番意識しています。
◆
黒沢さん自身の結婚式をきっかけに、ウエディングプランナーへ転身した黒沢さん。
秘書を経てようやく憧れの職に就き、その当時のやりがいと楽しさは相当なものだったという。
順風満帆なまま30.5歳を迎えるかと思いきや――。ある日突然、転機が訪れる。
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