「前菜で肉加工品やチーズ、野菜のマリネをつまみ、セコンド・ピアットで肉や魚をしっかり食べる。その間にあるプリモ・ピアットは、“粉”を味わうべきカテゴリー。この流れを、決して崩したくはないのです」。
『ヴォーロ・コズィ』西口大輔シェフの言葉をそのまま皿にのせたのが、“ポレンタとタレッジョチーズのラヴィオリ”。口の中に含み、ゆっくりしっかり噛み締めることで、口腔内全体が粉の旨みを感知する。90年代半ばに修業したミラノ『サドレル』で西口氏が出合ったこの皿は、従来のラヴィオリのイメージを完全に覆す、都会的な洗練された味わい。本来は重いポレンタさえも実に軽やかだ。
5年前に開業した自店でも、このラヴィオリを作り続けるのは、「北イタリア料理を伝えるんだ」という西口氏の強い意志と当時の衝撃の大きさが背景にある。レシピは変わらないが、素材の見直しは随時行い、現在はピエモンテのマリーノ社の有機小麦粉を主に使用する。
素材と技術、情熱ありき、の皿だ。
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