巷で中学受験が過熱していることは、すでに周知の事実だろう。
その一方で、徐々にではあるが確実に注目を集めているのが小学校受験だ。
とはいえテストの結果で合否が決まる中学受験と違って、独特な試験内容であることから「親の受験」とも言われる。
ゆえに夫婦共働きのサラリーマン家庭で、地方出身のために縁故もないと、小学校受験に躊躇するケースも少なくはない。
今回は、そのような境遇の家庭が小学校受験に挑んだケースを紹介する。
彼らは何に悩み、どう選択したのだろうか?
取材・文/風間文子
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“モヤモヤ”が生徒を覚醒させる?有名進学校を押しのけて躍進する、洗足学園の秘密とは
▼INDEX
1. 新参者には気後れする世界が、そこにはあった
2. ゼロからのスタートでまず戸惑うのは、塾探しで…
3. 小学校受験成功の分岐点。志望校探しはどうやった?
4. 共働き夫婦の試験対策は、試行錯誤の連続!
新参者には気後れする世界が、そこにはあった
今回、取材に協力してくれたのは港区在住の元木優子さん(仮名、40歳)。
彼女は出版社に勤務し、夫は大手メーカーに勤務している。夫婦共稼ぎのサラリーマン家庭で、世帯年収は約1,500万円だ。
しかし地方出身ゆえに、都内の小学校に縁故はない。そんな夫婦が愛娘を小学校受験させようと考えたのは、娘が2歳の頃だという。
「ゆくゆくは大学受験を視野に入れていて、最初は中高一貫校を中学受験させようと考えていました。
やはり中学、高校と別々の学校に行くより一貫校の方が有利なカリキュラムを組めるし、短いスパンでそう何度も受験させたくないという気持ちが強かった。
ですが、ご存じのように中学受験は過熱していて、もしかしたら納得のいく学校に合格できないかもしれない。
だったら同じようにエスカレーター式で高校卒業まで、場合によっては大学まで進学できる小学校受験というチャンスを生かすのもありだなと…」
そこには一生モノの友達との出会いがあり、将来の仕事や人生においても役立つ関係性が築けるのではないか。そんな期待もあったという。
ただ、近年の小学校受験は決して簡単なものではない。
ある塾が発表した、2022年秋の首都圏私立小学校の志願者倍率によると、最も高いのが慶應義塾横浜初等部で13.8倍となっている。
そのほか倍率を上位からランキング化したときの上位5校も10倍を超えており、8位に該当する桐朋小学校であっても8.5倍という高い数字になっている。
これらの数字はあくまで出願者数と募集人数をもとに算出しており、安易に学校の難易度を判断することは早計だが、小学受験に対する関心の高さはうかがえるだろう。
一方、優子さんが小学校受験に挑もうと決めた同時期、港区内のリトミック教室に娘を通わせたそうだが、そこには品のよい教育ママたちの独特な空気があり、小受を見据えて幼稚園受験するのが当たり前の世界があった。
耳にする話題といえば「あそこのお教室、知ってる?」といったお受験に関する内容ばかり。子どもがまだ新年少といえども、すでに競争は始まっていることを優子さんは知る。
そんな中で自分たちのような“新参者”が、しかも夫婦共働きのサラリーマン家庭が、果たして小学校受験に挑んでも良いのだろうか。そう、気後れしてしまったそうだ。
それでも一家は、最終的な志望校であるミッション系名門女子校の合格を勝ち取った。
いかにして小学校受験を乗り切り、合格を手にしたのだろうか?
ゼロからのスタートでまず戸惑うのは、塾探しで…
優子さんは「とにかく無知だった」と、当時を振り返る。
まず取り組むべきは、...
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