男と女の東京ミステリー Vol.9

東大卒の証券マンがハマった恋の沼。“ある女”の凄まじい魅力に、真面目な人生は一変し…

人の心は単純ではない。

たとえ友情や恋愛感情によって結ばれている相手でも、時に意見は食い違い、衝突が起きる。

軋轢や確執のなかで、感情は歪められ、別の形を成していく――。

これは、複雑怪奇な人間心理が生み出した、ミステリアスな物語。

▶前回:気になっている女性とエレベーターで2人きりに。チャンスだと思った男は、思わず大胆な行動に出て


努力の方向性【前編】


「なあ、岳。お前、なんで仕事辞めちゃったんだよ」

駿介は、友人の岳を問い詰める。

岳から退職の報告を受けたとき、駿介は驚いた。あまりに急なことだったから、丸の内にある『東京ビアホール&ビアテラス14』で話を聞くことにした。


駿介と岳は高校の同級生で、10年来の付き合いになる。

2人は同じ名門私立高校に通い、共に東京大学に進学。卒業後、駿介は大手証券会社に就職し、岳は大学院で博士課程を修了後、研究職に就いていたのだが…。

「飽きちゃったんだよ。もう、研究はいいや」

「それだけの理由?まあ、岳らしいっちゃらしいけど…」

駿介はあきれたものの、これまで積み上げてきたものを躊躇いもなく放棄する岳の生き方に、どこか感心していた。

2人は互いに高校のころから成績はトップクラスだったが、勉強に取り組む姿勢は真逆だった。

駿介は、目標を立ててそれに向かってひたむきに努力を積み重ねていく実直なタイプ。好きな言葉は『努力は嘘をつかない』だ。

一方の岳は、いざとなると凄まじい集中力を発揮するものの、普段は勉強そっちのけで趣味に時間を費やしていた。大学時代も急に1年間休学をして、海外に放浪の旅に出てしまった経緯がある。

駿介は、そんな岳から刺激を受けることが多く、正反対な性格ながら懇意にしてきた。

「じゃあ、今は何もやってないわけ?」

駿介が尋ねると、岳が「まあね」と言ってビールをグビリとあおる。

「あ、でも。実は今、ハマってるものがあるんだ」

「ハマってるもの?」

「ああ。これからそこに行くんだけど…」

岳が腕時計を見る。

「よし、丁度いい。駿介、お前もついてこい!」

夏の終わりの夜風にシャツをなびかせ、颯爽と歩いていく岳のあとを、駿介はとりあえず追った。

この記事へのコメント

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No Name
アルファードのパパに支援してもらってる?
驚愕の事実って、だいたい想像出来るような内容だけどなぁ。ハマるといい方にしか考えられなくなるのか....
母親ネタも嘘っぽいし。
2023/09/14 05:1848返信1件
No Name
りさぷぅ
初恋トゥインクル

寒々しい。
2023/09/14 05:1128返信1件
No Name
どうせ生い立ちの話も嘘なんでしょ
金を溶かすバカな男の話
2023/09/14 06:4518
もっと見る ( 11 件 )

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