― 【ご報告】―
SNSやメールでたびたび見るこの言葉に、心がざわついた経験はないだろうか?
人生において、新たなステージに入った【ご報告】をする人。
受ける側は【ご報告】されることによって、相手との関係性を見直したり、自らの人生や現在地を振り返ることになるだろう。
この文字を目にした人は、誰もが違う明日を迎える。
これは【ご報告】からはじまるストーリー。
「【ご報告】」一挙に全話おさらい!
第1話:同期入社の男女が過ごした一度きりの熱い夜。いまだ友人同士ふたりが数年後に再び…
同期入社の村山翠からの一斉メール。そこには、彼女が1ヶ月後に退社するという『ご報告』が記されていたのだ。
「嘘だろ…そんなこと一切聞いてないぞ」
何よりもショックだったのが、退職の相談どころか、事前の報告を一切受けていなかったこと。この自分が、他の同期はもとより、上司や取引先などと同列に扱われていることを思い知らされた。
確かに、2年前から勤務する支社が離れ、会うのは頻繁ではなくなった。が、それでも翠とは友人以上の関係であると、勝手にうぬぼれていたのかもしれない。
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第2話:今の彼は、友人に紹介できない…。結婚報告を目前に、冴えないルックスの夫に妻が頼み込んだこと
恋愛に発展するとは一切考えていなかった気楽さもあって、茂男とは大学の同級生だという先輩を介して何度か会ううち、見た目通りの優しい立ち振る舞いにどんどん心惹かれていった。
何よりも彼といると居心地がよかったのだ。少し年上ということもあり、大人の包容力も申し分ない相手。
― 欠点は、ひとつだけ…にしては大きすぎるのよ。
陽菜からみれば、茂男のルックスはカバのようでとても可愛らしい。だが、それはチャームポイントであると同時に、大きなウィークポイントでもあった。
― 彼と並んで、『結婚のご報告』、するのかぁ……。
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第3話:義母からの執拗な「子どもはまだ?」攻撃。守ってくれない夫にも限界を感じた女はついに…
怜衣は、こんな状態にはすっかり慣れているのだろう。長男至上主義の家に生まれたのだから当然と言えば当然だが、母の暴走を止めるわけではく、同調すらしはじめる。
「お義姉さんも子どもが要らないわけではないんでしょう?」
「はい。子どもは大好きですし、もちろん、いつかは欲しいと思ってますよ」
「じゃあどうして?積極的な妊活はしていないそうじゃないですか」
直接的過ぎるその質問の答えを、真美は言葉で濁しながらも、心の中で呟く。
― この家では、産みたくないからよ。
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第4話:新築の注文住宅に、元同僚を招待したら…。一触即発の空気になってしまったティータイムの一言
今は事業も軌道に乗り、ハンドメイドマーケットやファッションビルの催事に招待されるなど、その界隈では注目の作家となっている。注文が絶えない状態ではあるが、自分のペースを保った気ままな日々だ。
一方の皆実は、昨年末にパートナーと婚約をしたというが、引き続き同じ商社に勤めている。都会でバリバリ働きキャリアを積んでいる彼女を、ゆかりは心の底から尊敬していた。
― 久々に会えるの、楽しみ。いろいろお話したいな。
だがその期待は、皆実がゆかりの家に一歩足を踏み入れた途端…脆くも崩れたのだった。
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第5話:「あの子といると、自分がみじめになる」出世頭の同級生に嫉妬。しかし、彼女の仕事ぶりは実は…
明日奈のSNSの投稿履歴を覗くと、有名作家と並んで写った写真やベストセラー書籍の書影、知り合いの作家から贈られたという献本の写真などで埋め尽くされている。
もちろん公開範囲は限定されているが、文香は例え友人の間だけでも、SNSで自慢できるような仕事を今までしたことはない。
今の仕事自体は楽しくて、やりがいを感じている。まだ27歳で、キャリアもこれからのはずだ。だけど、ここまで差を見せつけられてしまうと、どうしても自分が情けなく、ちっぽけに思えてしまう。…彼女に憎しみを抱いてしまうほどに。
文香が重い気持ちのまま宴の空間に戻ると、なぜか明日奈が待ち構えていたかのように声をかけてきた。
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第6話:「元気?」元カレから突然DMが…。平凡な主婦になった元モデルは、彼との昔を思い出してつい…
昨日のカレーの残りを食べながら、スマホをなにげなく手に取る。専業主婦といえども、慌ただしい日常。この時間が仁海の唯一の安らげる時間だ。
Instagramを開くと、ある投稿が目に留まる。
「え、嘘…」
<村井智成、引退することを決断しました>
キャプションの内容とは裏腹に、太陽の光降り注ぐ中、サッカーボールを手に笑顔を見せている男の姿。元日本代表のサッカー選手。彼は実は、仁海の元恋人であった。
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第7話:【ご報告】に取り憑かれたインフルエンサー。彼女が投稿で表明した驚愕のお知らせとは
ナミはアパレル会社でプレスとして勤める25歳。インスタグラマーとしての活動もしている。
会社からSNSの勧奨もあり、軽い気持ちで始めたInstagram。しかし、現在は本業以上にのめりこみ、フォロワーも万をゆうに超えている。
「これでいいか…」
大切なフォロワーに向けての大事な報告。
1枚目は【ご報告】と文字のみ。2枚目からは“愛娘”と撮影したとっておきの写真を、多少の加工を施しつつ、掲載するのだった。
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第8話:起業して、急に羽振りの良くなった元同僚に呼び出され…。変化のない毎日を送る女が言われた言葉
「すごい……26歳で起業!?」
3ヶ月前に会社を退職した、元同僚の河合優華。SNSに堂々と表示された【ご報告】という文字を見て、未央は思わず声を上げてしまう。
<私こと、河合優華は、かねてより準備を進めておりました新会社『アニベルス』を設立するはこびとなりましたのでお知らせ申し上げます──>
写真には、共同事業者の仲間たちと肩を組んだ優華の笑顔が輝いている。彼らは、卒業した早稲田大学の同期、ということだ。
― 自分も、同じ年なのに…。
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第9話:ヒモ同然だった元カレが、司法試験に合格。生まれ変わった彼から差し出された、封筒の中身は…
― 頑張ったんだ、良一。
驚きとともに、懐かしい気持ちが蘇ってくる。4年前、良一とは彼の司法試験5浪が決定したことをきっかけに別れた。
奈津美は新卒から大手電機メーカーで事務系総合職として勤務。当時は彼の生活のほとんどを面倒見ていたと言っても過言ではない。一緒に暮らしながら、良一の浪人生活を支える毎日。
良一は学習塾でのアルバイトに精を出しているかと思えば、突然いなくなってバイクで長期間貧乏旅行にいってしまうような、そんな男だった。
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第10話:交際3年目の恋人が、既婚者と判明。「妻と離婚する」の言葉が信じられずに別れた女だったが…
その報告を見たのは、2月の寒いの夜だった。独立してオープンしたばかりのエステサロン事業も軌道に乗り始めた、その時のこと──。
高窪凛、32歳。独身。ひとり暮らし。恋人はずっといない。正確に言えば1年前まで、”恋人のような”人はいた。
自分は恋人と思っていたけど、相手にとっては愛人だった…というわけだ。
【ご報告:この度、妻と離婚しました 杉山勝己】
引き寄せられるようにアクセスし、見てしまった彼のFacebook投稿。事実だけを淡々と紡いだ短い文章を、私はじっくりとかみしめる。
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第11話:「キャンプ場作りたいんだ」田舎で輝く彼を追いかけたら…。東京ライフに疲れた女が見た、男の末路
穂波は、広告代理店に勤めるCMプランナー。入社以来、アシスタントとして数多くの場数を踏み、昨年やっとデビューとなる広告作品を手掛けることができた。
しかしまだ、駆け出しのひとりだ。上を目指すには、スタート地点である。ソファの上で文字を打ちながら、穂波は眠りの沼に誘われる。そして、いつの間にか朝を迎えるのだろう。日々はその繰り返しだった。
「…おっと、いけない」
はっと目を覚まし、やり残したルーティンであるSNSの巡回を始めた。
流行の話題やアイデアのヒントが、どこかに転がっているかもしれない。寝る前のこの作業は欠かせないのだ。そんな時、インスタである【ご報告】を目にした。
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第12話:昨日まで優しかった彼が、突然モラハラ男に豹変。絶望した女は悲しみのあまり、ある決断をして…
「どうして…こんなことに」
真剣な演技を、周囲のスタッフは固唾を飲んで見守っていた。女優のマネージャー・花村志津加もその中のひとりだ。
― 麻友ちゃん、さすがの演技。丸一日セリフ合わせに付き合ってよかった。
志津香は、芸能プロダクションに勤める31歳のマネージャー。
若手演技派として今をときめく芦川麻友を無名時代から担当し、トップ女優に育て上げた。きめ細かいサポートでタレントからの信頼は厚く、事務所内ではエースマネージャーと呼ばれる存在にまでなっている。
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