「私のこと、どう思っているの?」
銀座のイタリアンで食事中、何度もそう問いかけたくなった。
今日で会うのは3度目の晃。出会いはマッチングアプリで、2回とも楽しいデートだった。
でもいまだに微妙な距離があって、近づきたくても近づけないこの雰囲気に多少の焦りも感じ始めていた。
「この後、もう一軒どうですか?」
「はい!終電までなら……」
また来た。いつも、食事終わりに2軒目には誘ってくれる。でも毎回バーへ行っては静かに飲んで解散…というのがお決まりパターン。
だから今日も特に事態が動くことはないかと、タクシーへと乗り込む。
「ここです。この上にカラオケがあるんです。きっと好きな感じじゃないかって。ほら、この前カラオケの話してたし」
向かった先はにぎわうコリドー街で、タクシーは普通のビルの前で止まった。
〝好きな感じ〞が何かわからなかったけれど、エレベーターが5階で止まり、扉が開いた瞬間に、思わず「え…?」と声が出た。
目に飛び込んできたのは、ホテルのレセプションのようにセンス良く、お洒落でスタイリッシュなエントランス。
「〝VIGO〞?ここって…本当にカラオケなんですか?」
「そうなんですよ。一見わからないんですがビッグエコーの系列だそうで」
照れくさそうに「以前、先輩に連れてこられて…」と言う晃が少し可愛い。
受付を済ませて、部屋へと案内され、また驚いた。
モダンシックな印象で各部屋にはホテルのようなルームナンバーが付いている。敷き詰められた絨毯が心地良く、ヒールで疲れた足が安堵しているようだった。
部屋も圧巻。目を引く照明にデザイン性の高い壁面。広い窓からコリドー街を見下ろせて、大画面の液晶テレビとダーツまで完備。
思わずSNSのストーリーにアップする。文面は「カラオケがゴージャス過ぎる」。