• PR
  • 「終電までならいいよ」と言われ、男が2軒目に連れて行った意外な場所とは

    VIPルーム「716」は、ムードある照明やお洒落な壁面が心を昂らせる


    乾杯も早々に、晃が曲を入れる。曲は新し過ぎず、古過ぎず、いい塩梅だ。何より、何も言わずに先陣を切ってくれる様に頼もしさを感じた。

    銀座という街と、ワンランク上の場所にいる高揚感のせいだろうか。いつもカラオケは相手主導な私でも、今日は自ら歌いたくなってしまう。

    「絵美さん、よかったらあの曲歌ってくださいよ!」

    晃は歌っている最中はしっかり聞いてくれるのに、飲み物やフードもさりげなくオーダーしてくれる。

    なかなかなシャンパンをボトルでオーダーしているのには驚いたけど(笑)。

    部屋の中にはダーツまであるから会話以外も盛り上がるし、ふたりきりの空間で彼の魅力がさらに増していく。

    「この曲、すごく好きだった!懐かしいな〜」

    「晃くんも?私もこの曲、大好きだった!」

    2回のデートで崩せなかった、微妙な距離。気がつけば敬語もなくなり、そして自然と密接して隣同士に座り合っていた。お酒のペースがいつもより早くなる。

    店選びのランクによって、相手がどれほど考えてくれているのかがよくわかる。

    晃はとっさにここに連れてきた風を装っていたが、受付の時、私が離れた瞬間、聞こえないように「予約の…」と言っていたのが聞こえていた。

    今日のデートの本当の目的地はここだった。彼の見えすいた思惑が愛おしく思える。

    「絵美ちゃんって、もっとクールな感じかなと思っていて…。どうにか距離を縮められないかって思ってて」

    「そうなの?そんなの、私だってそうだよ!え、じゃあさ、お互いの高校時代の曲、歌おうよ」

    カラオケでの2歳差は誤差だ。ほぼ同年代だし、その後の盛り上がりは言うまでもない。

    テーブルの上に置いたスマホの画面が、23:50と表示されて光っている。でも私はそっとスマホをカバンの中にしまった。

    ― 今日はもう少し、このままで…。

    夜はまだまだ、これから。黄金色に輝くシャンパンの泡が、目の前で弾けていった。

    おすすめ記事

    もどる
    すすむ

    東京カレンダーショッピング

    もどる
    すすむ

    ロングヒット記事

    もどる
    すすむ
    Appstore logo Googleplay logo