2023.02.02
「渋谷には、大人デートにふさわしい店があるんだろうか...」という先入観があるかもしれない。
だが、実は渋谷にも、大人だからこそ素晴らしさが伝わる、本気の名店が潜んでいるのだ。
今回はワイン片手に楽しめる、雰囲気抜群のフレンチ・ビストロを3店ご紹介しよう!
◆
※コロナ禍の状況につき、来店の際には店舗へお問い合わせください。
1.住宅街の妖艶なビストロこそ美食を諦めない大人の奥の手
『ラボ』
渋谷東急本店を正面に、右へと進むと奥渋だが、左へと進むと一気に住宅街の雰囲気が色濃くなる。
まだ名もなき通りではあるが、ポツポツと灯る明かりが良店の存在を教えてくれる。
ガラス張りのエントランスから優しい明かりがもれる、骨太なビストロ
ヴィンテージマンションの1階に『ラボ』がオープンしたのは1999年。まだ目の前の通りが一方通行で、周りにはほとんど店がなかった。
だが、フランス帰りだったオーナーシェフは「ダメならまた渡仏すればいいと、軽い気持ちで」この場所に店を開いたという。
すると、少しずつではあるが、”渋谷で深夜でも美味しいものが食べられる稀有な場所”として、大人たちが通うようになった。それは、令和を迎えた今も変わらない。
店内は、秘密のアジトのようでも、アートギャラリーのようでもあるミックス感が渋谷らしい。
深夜の空腹が瞬時に満たされるひと皿
「牛フィレ肉のカツレツ」
厚さ5cm超、重さ400gという分厚い牛フィレ肉をコールドスタートで約15分、ゆっくり油をかけながら火入れ。
ロゼ色の肉汁が溢れ出るタイミングを見極め、カットして供す。いつだってテーブルから歓声が上がる名物だ。
「味付けはジャズ」というシェフの言葉通り、エスニック風スパイスあり、ジェノベーゼソースありとその日の気分次第でアレンジ。
ゲストのリクエストにもできる限り応えてくれる。ポーション調整も可能だ。4,500円。
◆
「秋刀魚のコンフィ」「オマール海老のアメリケーヌソース」といったスペシャリテから、「仔羊のカスレ」や「ブーダンノワール」といった冬限定のメニューまで。
フレンチをベースにした心躍る”ごちそう”が大人たちの胃袋を満たしている。
たっぷりのハーブと刻んだアーモンドがアクセントの「氷見寒ブリのタルタル」2,000円。
ゆず香る自家製のアンチョビソースとともに、スターターのひと皿としてオーダーしたい。
オーブンでじっくり焼き上げた「猪のロールキャベツ」4,800円。
カットすると中からポートワインで甘く仕上げた栗がお目見え。さっぱりした味わいの肉質がジビエの鮮度の高さを証明している。
深夜2時まで営業しているので、遅めスタートの1軒目でも、バーとしての2軒目利用も可能。
また、肩を寄せ合うならカウンター席、寛ぐならソファ席と、TPOに応じて座る場所も選べるだけに、料理以外の部分でもデートを成功へと導く要素は十分といえる。
渋谷デートの切り札として、大人なら押さえておきたい1軒だ。
女心に響くナチュラルワインとフルーツカクテルが今宵の杯を進めます
ワインもカクテルも好みのテイストを伝えれば、ぴったりのものをセレクトしてくれる。
ラインナップもナチュールからクラシックまで幅広い。ボトル 4,000円~、グラス 1,000円~。
女性に人気のカクテルは、旬のフルーツを使ったもの。
この日は搾ったザクロにアイラウイスキーの「カオルアイラ」を合わせ、ソーダで割った甘酸っぱい1杯。2,000円。
活気あるビストロのイメージを覆す艶やかなムードで愛を語らう
ガラスの引き戸を開けてすぐはソファスペース。
中扉を開けると、カウンター席とテーブル席が配されたメインダイニングへと続く。ムードある仄暗さに加え、頭上できらめくシャンデリアがふたりの夜を色っぽく彩る。
中扉を閉めれば個室的に使うこともできる。
■店舗概要
住所:渋谷区松濤2-14-12 シャンボール松濤 102
TEL:03-3469-6722
営業時間:19:00~26:00
定休日:月曜、第1・第3日曜
席数:カウンター5席、テーブル15席
2.本格フレンチのフルコースこそが「渋谷で非日常」を叶えてくれる
『モノリス』
「最新」という言葉がよく似合う渋谷で、2010年の開店以来ずっとクラシカルなフレンチの特別感を伝えてきたレストランがある。
伝統を重んじながら今の空気感も押さえる『モノリス』で、ここぞのデートを楽しみたい。
本質を知る大人の特別なディナーは”青学裏”の一軒で
店名はスタンリー・キューブリック監督の名作映画『2001年宇宙の旅』に登場する、謎の黒い一枚岩の石柱から。
外観もそのイメージでデザインされており、モノトーンの石が並んだ様子はモダンでどこか近未来を思わせる。
次々と新しいトレンドが生まれる渋谷という街にふさわしい、個性的な佇まいだ。
十数年を経て完成した、ザクザク&しっとり
「パイ包み焼き」
オーナーシェフ・石井 剛さん自ら「最も得意で思い入れの強い料理」と公言する名物。
中に詰める素材は季節で変わり、牛肉はもちろんジビエや魚介など、あらゆる素材を使うが、この日は足利マール牛のザブトンとフォアグラ、ローズマリー風味のキノコペースト。
隙間なく仕上げる点に独自の工夫があり、ザクザク食感の生地と、しっとり柔らかい肉のコントラストが見事。
温度も時間も異なる素材の火入れを、同時に仕上げるテクニックも試行錯誤の賜物だ。
◆
「古典的なメニューですが、召し上がるのは現代人。本来使うバターは控えてそのコクを、手間をかけて補い、最新の技術や調理機器で、軽やかさを追求しています」
古き良き王道を、今のニーズを見極め、表現する。それが石井さんのモットーで、変化の激しいこの街でずっと続けてきたこと。
威風堂々たる王道フレンチのオンパレードに、高揚感が止まらない
魚のメインは「ボンファム」で肉は「パイ包み焼き」。
どちらも古くからある料理だが、両方をコースに組み込む大胆さに、クラシカルなフレンチの魅力を伝えんとする、石井シェフの本気度が伝わってくる。シンプルだが美しく、貫禄ある仕上がりも見事。
しかし、ソースも含め食後感は驚くほど軽く、従来の古典フレンチの先入観は覆る。
塩気と甘みをあえて合わせる“シュクレサレ”、熱&冷の”ショーフロア”といった技法を応用する「モノリスエッグ」。
殻の中は滑らかなスクランブルエッグとソテーベーコン、甘酸っぱいクリームソースが層に。
「アミューズ3種」。この日はクミン風味のニンジンムース入り竹炭マカロンなど。
「サワラのスモーク 自家製カラスミ添え」。
スモークサーモンに代表されるフレンチの「冷燻」をアレンジ。
料理とデザートの間に供する「モノリスクレープ」。トリュフとメイプルシロップで”シュクレサレ”に。
フルコースは徹頭徹尾、威風堂々の古典が続くが、その実、調理工程は試行錯誤を重ね、アップデートを繰り返してきた。
本物である上に新しい。だから『モノリス』は、不動の地位を築いたのだろう。
軽やかに味わえるから、心は自然とリラックスできる。フレンチの非日常感をふたりでカジュアルに堪能できる渋谷は、奥が深いのだ。
季節のパフェが女心をくすぐる!
冬の定番は「イチゴのカクテル」。
オレンジジュレ、ヨーグルトムース、イチゴスープが層になっており、華やか。仕上げにバニラアイスをあしらっている。
料理だけじゃない『モノリス』の魅力を徹底解剖!伝統を重んじる名店が醸し出す、そこはかとない渋谷らしさ
温故知新でフレンチの魅力を伝える『モノリス』だが、渋谷にあることも欠かせない要素。
この店に宿る渋谷らしさにフォーカスした。
店内もクラシカルとは一線を画すカジュアルさ
クラシカルな料理を提供するフレンチなら、白のテーブルクロスが一般的。
しかし『モノリス』では2018年のリニューアル以降、グリーンやオレンジなど明るい挿し色を用いて、カジュアルな雰囲気を演出している。
さりげないオブジェなども相まった空間は正統派とはかけ離れ、そのギャップが心地よい。
渋谷で愛されるレストランの条件
「ここは修業時代を過ごしたレストラン『アテスエ』があった場所。当時から大人びた雰囲気が漂うエリアで、いいなと感じていました。
独立する際に師匠から”ここでやらないか?”と、お声がけいただいた時は即決でしたね。
今でもこの辺りには当時の面影が残っていて、『ふれんち御膳Mono-bis』を開いておひとりさま需要に応えたいと考えたのも、少しでも地域の役に立てたらという思いがあったからだと思います。
10年以上もやっていると大変なこともいろいろとありましたが、最近はInstagramをきっかけに若いお客さまの来店も増えていて、いっそうのやりがいを感じています。
クラシカルなフレンチの素晴らしさを、次世代にきっちりと伝えていく。そこはこれからもブレずに続けていきたいと思っています。その意味でも渋谷はいい場所です」
『アテスエ』で修業した後、渡仏。『ジョルジュ・ブラン』『ベルナール・ロバン』などの名店で腕を磨く。
帰国して『モナリザ 丸の内店』料理長に。2010年に独立を果たした。
■店舗概要
住所:渋谷区渋谷2-6-1 平塚ビル 1F
TEL:03-6427-3580
営業時間:ランチ 12:00~(L.O.13:30)
ディナー 18:00~(L.O.20:00)
定休日:月曜
席数:テーブル20席
3.のんべい横丁で美食こそ渋谷のエンターテインメント
『ビストロ・ダルブル 渋谷本店』
1950年(!)に現在の場所につくられた歴史ある飲み屋街は、昭和レトロな雰囲気たっぷりの魔宮だ。
デートで訪れるのも一興だが、店を選ぶ際は本格フレンチを“アテ”にワインを楽しめる店がいい。
混沌とした雰囲気におっかなびっくり……でも美味しい!
「のんべい横丁に興味はあるし、行ってみたい。でも、勇気がない」。そういう女性は思いのほか多い。
無論、そこで「いい店があるから、行こう」と言えれば、大きなアドバンテージだが、デートでもきちんと成立する店となると選択肢は限られる。
そこで押さえておきたいのが『ビストロ・ダルブル 渋谷本店』だ。
横丁唯一のフレンチビストロであり、恵比寿にも店を構える人気店だけに、その安心感たるや絶大。
約50年間、愛され続けるフランスの郷土料理
「カスレ」
まだ道玄坂裏に店があった1974年の開業当初から受け継がれている伝統のひと皿。
白いんげん豆はスープで炊き、さらに豚足、豚バラ、豚耳といった豚肉のいろいろな部位の旨みを凝縮するため、煮込みを含めて完成までに3日間を要する。
生ベーコン、鴨のコンフィ、ソーセージといった具材からあふれる肉汁もまた、その濃厚な味わいを加速させる。
ホクホクした豆の甘さも口の中でじんわり滲み、赤ワインとの相性は最高だ。1,300円。
◆
黒板に書かれたメニューは少数だが、パテをはじめワインが進むラインナップ。いずれも恵比寿店と同じクオリティで、味は申し分なしだ。
また、フランス語で「木の」という意味を持つ店名「ダルブル(dʼarbre)」のとおり、木造の店内は温かみがあふれていて、狭いながらも妙に居心地がいい。
「横丁がテーマパークで、それぞれの店がアトラクション。そんな風に思ってくれれば、楽しいデートになるのでは」とは、先代の父から店を受け継いだオーナーの中西大輔さん。
夜の渋谷で〝非日常〞を満喫できるテーマパークデート。そんな趣向もたまには悪くない。
艶やかな大人もワクワクが止まらない!刺激的なデートを約束する『ビストロ・ダルブル』の楽しみ方
アトラクションに攻略法が存在するように、店を賢く上手に使うにはコツが必要だ。
押さえておくべきポイントを解説しよう。
「のんべい横丁」は屋台から派生して生まれたため、多くの店が約2~3坪と狭小だ。
入れる人数は限られているため、確実に席をキープするには、予約はマストと心得たい。
TPOに応じてフロアを変えて使い分ける!
ロフトを含めると3つのフロアで構成されている。
横丁内を何軒もハシゴする“横丁ホッパー”の常連客は1階に多いので、デートであれば上階でゆっくり過ごすのがオススメだ。
しっぽりふたりだけの世界に浸るなら3階ロフト。
焦らずテーブルにのるぶんだけオーダーせよ
グラスふたつとひと皿、がテーブルにのる最大だと心得よ。2,3階はもちろん、1階のカウンターも奥行きがないため同様だ。
オーダーする際は、料理はひと皿ずつ、ゆっくり味わいながら少しずつ進めるのが正解なのだ。
「牛トリッパのミートソースグラタン」(900円)は、濃厚な旨みの奥からスパイシーさが立ち上り、食べ応え十分。
肉々しさを感じさせながらも、しっとりした味わいが上品。添えられた野菜のピクルスも名脇役として「田舎風パテ」(800円)を引き立てる。
黒板メニューの内容は、季節や仕入れによって変わるがこの2品は定番だ。
上階で過ごすならワインはボトルオーダーが正解
スタッフの行き来する時間を考慮して、ワインならボトルで頼むと無駄がない。値段は約5,000円~で、グラスはいずれも1杯800円。
日によってはナチュールもあるので、スタッフに相談を。
■店舗概要
住所:渋谷区渋谷1-25-9 のんべい横丁
TEL:03-3406-7109
営業時間:18:00~23:00
定休日:日曜
席数:1Fカウンター5席、2Fテーブル6席、屋根裏テーブル2席
◆
ワインを片手に美食を味わう体験が、2人の距離を縮めること間違いなし!
シーン次第で使い分けられる3店は、渋谷でデートする際の候補として手札に加えておきたい。
▶このほか:大人のためだけの和食酒場4選。楽しく飲める、渋谷のイマドキ店の魅力に迫る!
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