Case1:六本木一丁目在住。タワマン独身貴族男の実態
整然としたエントランスでインターホンを押し、コンシェルジュの前を通過する。再びインターホンを押してから、エレベーターへと進んだ。
まるでホテルのような廊下を長々と歩いて、ようやく今日のホームパーティーの主催者である、玲二さんの部屋の前まで辿り着く。
「お邪魔します…。わぁ、綺麗!」
「内装もいいね、ここ」
10階前後、50平米の部屋でも「2億円はくだらない」と言われているこのマンション。
玲二さんの部屋は18階にある2LDK。ベッドルームなどは見ていないけれど、たぶん80平米以上あると思う。
20平米はありそうなリビングに通されると、そこには私とアリス、そして玲二さん以外に男女4名がすでに集まっていた。
「美月ちゃん、いらっしゃい。シャンパンでいい?」
「はい!ありがとうございます」
広々としたキッチンから、玲二さんがシャンパングラスを持ってきてくれる。
キッチンは海外製のオーブン付きで、食洗機も内蔵。収納スペースも多いけれど決して雑多な感じではなく、カウンターには『バルミューダ』の黒い調理家電が並んでいる。
まさに理想的なキッチンだった。
経営者の玲二さんとは、先日の食事会で知り合った。年齢は35歳くらいだろう。背は少し低いけれど、慶應卒らしい明るくて人懐っこい雰囲気が隠しきれていない。
さりげなく手を洗うついでに洗面所を見たところ、女性の影はない。ちなみに洗面ボウルが2つ並んでいるタイプだったけれど、サイドに置かれている電動歯ブラシは1つだけだった。
「こちら、友達のアリスです。大学が一緒で」
「そうなんだ。初めまして、玲二です」
初対面のアリスにも感じよく接してくれるスマートさに、私はさらにキュンとしてしまう。
そしてグラスに注がれたシャンパンの、泡越しに見えるこの眺め。目の前にはほかのビルも立ち並んでいるので「最高の絶景」とまでは言えないかもしれない。
でもやっぱり、タワマン特有の高揚感は最高だった。
「フードはデリバリーになっちゃったけど、いいかな?」
「もちろんです!むしろ準備していただき、ありがとうございます」
― どうやったら、彼に気に入られるだろうか。
そんなことばかり考えながら、私はゆっくりと部屋を見渡してみる。無駄な家具は一切なく、大きなアイボリーのソファがリビングに鎮座している。きっと、イタリア系の高級ブランドの物だろう。
玲二さんと、この部屋はどこか似ている。無駄がなくてシンプル。けれども洗練されている。
大きなダイニングテーブルでデリバリーフードとお酒を囲みながら、和やかな雰囲気でホムパは進んでいった。ただ途中から、私は蚊帳の外になり始めたのだ。
「そういえば玲二。あの案件どうなった?」
「あぁ。今、準備していて…」
お酒が入った男性陣は、仕事の話をし始めたのである。その瞬間「もしかして私は邪魔なだけなのかな」と嫌でも思うことになった。
この記事へのコメント
それ家庭的アピールにもならないし、ポイント高くなる?いやいや低くなるわ。
いつの時代かな。