東京では今日も、男女の間にあらゆるトラブルが発生している。なかには解決が難しい、不可解な事件も…。
そんな事件を鮮やかに解決してSNSを賑わせている、ある1人の男がいたー。
彼の名は光城タツヤ。職業は、探偵。
今日彼のもとにやってきたのは、同棲中の彼女が失踪してしまった男性だ。
あなたも、この事件の謎を一緒に考えてくれないだろうか…?
2つの顔を持つ男・光城タツヤ
「付き合って3年になる彼女が、突然失踪したんです」
僕がそんなDMを受けとったのは、9月中旬のことだった。
相談主は田中翔太さん、33歳。
田中さんは、ある掲示板で恋愛探偵をしている僕の噂を聞きつけたらしい。そしてTwitterのアカウントに、1通のDMを送ってきたのだった。
「失踪、か…。ちょっと気になるな」
僕はコーヒーを片手に、32万人のフォロワーを持つ自分のアカウントを見つめる。アイコンは猫。自分のペットではなく、元カノが飼っていた三毛猫だ。
「…ちょっと竜也先輩、さっきからスマホばっかり見て!はいこれ、さっきの会議の資料です」
後輩の女子社員・田原に声をかけられ、僕はふと我に返る。
「あぁ、ありがとう」
「土曜日の午前中に会議なんて、イヤになっちゃいますよね。じゃ、私はこれで失礼しま~す」
そう言って彼女は、ひらひらと手を振りながらオフィスを出て行った。
「…さて、と。俺も帰るか」
大きく深呼吸をし、オフィスを出る。そしてスマホに184と打ち込み、非通知設定で電話をかけた。
僕には2つの顔がある。1つは東京駅近くのオフィスで働く商社マン。そしてもう1つは、未解決恋愛事件を解決する探偵だ。
ちなみに探偵業は土日限定。依頼を受けるかどうかは僕の気分次第である。
前提として、僕は絶対に依頼人と直接会うことはしない。依頼人に自分のプライベートな情報は一切明かさないのが、探偵としての僕のポリシーなのだ。
非通知で電話をかけると、三度目のコールで「田中」と名乗る男が電話に出た。
「どうも、恋愛探偵の光城タツヤです」
「あぁ、ご連絡お待ちしておりましたよ!タツヤさんの活躍はSNSなどで拝見しております。それでですね…」
電話越しの彼は興奮し、まくしたてるようにして恋人が突然消えた日のことを話し始めた。
この記事へのコメント
だから彼女に愛想尽かされたんだろうけど。
もう戻って来ない、その男と逃げたんだよね。
彼女は田中さんと別れようとしてたんですか?と聞かれて、「そんなことある訳ないじゃないですか、考えただけで腹立たしい」とか興奮しちゃって。飼い猫じゃあるまいし、家で監視するとか異常。