東大卒の夜遊びコラムニスト・ジェラシーくるみが書下ろす『もう、港区女子と呼ばないで』

社会人1~3年目、カラオケのタンバリン芸

暇を持て余していた大学生の間は、ノートをちぎって「商社」「代理店」「弁護士」「外銀」などの項目を9マス書き、ナンパされた男の職業でビンゴゲームをした。罰ゲームで逆ナンもした。

六本木ヒルズや東京ミッドタウンや元麻布、檜町の各種タワマン訪問も一通り済ませ、こっそり写真を撮って仲間内で共有した。

有名人が隣に呼ぶのはいつもモデルのように可愛い子ばかりで、私のような一般人は家に誘われたり下世話な話を振られたりするだけ。

『エンタの神様』時代からずっと好きだった芸人と飲んだとき、彼は目の前で私の友達と熱い接吻をかわした。

ずいぶん手慣れたもので、誰かにカメラを向けられても撮られないよう、相手の長い髪で自分の顔を隠す器用なテクを持っており、今もテレビで彼を見かけるとあの姑息なキスが思い浮かぶ。


『エーライフ』のVIPや星条旗通りの『glam』では毎週のように誰かの誕生日パーティーが開かれていて、主役の名前を知らぬまま名無しの誕生日を祝うこともしばしば。

可憐な花びらが散らしてある顔写真入りのフォトケーキはごりごりに映えるものの、奥歯に花びらが詰まって食べづらく、庶民派の舌としては『コージーコーナー』のミルクレープが恋しくなった。

写真はカラオケ、テキーラ、タンバリン。今も昔も港区女子の三種の神器だ


六本木で一番楽しかった思い出は、社会人1〜3年目の頃に詰まっている。

有り余る体力とストレスをぶん回し、会社のトイレで髪を巻いて意気揚々と出陣した。


この街の住人とのカラオケは戦だ。即興の替え歌で飲ませる技術とタンバリン芸は、エクセルやパワポスキルの前にいち早く身についた。

同世代の仲間とカラオケではしゃいだ翌朝は、身に覚えのないあざが戦士の傷のごとく手脚に残っていて、心地よい疲労と達成感が身体を包んだ。

コンビニに行く気力もない日のブランチは、冷蔵庫の隅にあった賞味期限切れの豆腐にスライスチーズと胡椒をかけてチンしたもの。名もなき料理でも腹は膨れることを身をもって知った。

被服費と毎晩のタクシー代でひいひい言っていた私に「毎日男とご飯食べれば月の食費2万に収まるじゃん」と教えてくれた友人は、外銀マンとマカオで豪遊した翌年に会社の同期と結婚し、今はポメチワと夫と三軒茶屋で暮らしている。

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