東大卒の夜遊びコラムニスト・ジェラシーくるみが書下ろす『もう、港区女子と呼ばないで』

ゲームのギルドのように、港区の街を冒険する日々

「社会に出ると本当の友達はできない」という大人の伝承を覆すかのごとく、貴重な合コン仲間もできた。

出自はバラバラだけれど、容姿・ノリ・学歴・経験値の4つの指標を掛け合わせた総合能力値は大体一緒。その中の数人とは何度か旅行に行き、人と話さずに終わった週末の夜にだらだら電話するくらいには親密な仲だ。

ゲームのギルドさながら、気になる男性をハントする戦略を話し合ったり、得意分野を掛け合わせて陣形を組んだりして、六本木〜西麻布〜広尾〜十番とエリア移動しながら港区の街を冒険した。


経営者が鼻の下を伸ばして開くパーティーや接待飲み会よりも、共に社会で揉まれている同世代サラリーマンとの合コンが好きだった。

合コンはいつだって団体戦。一次会終盤での女子の「トイレ行ってくる〜」で第二回戦のゴングが鳴り響く。

お手洗いでメイク直しと同時に「GS(ゴールドマン・サックス)の友達が『マンシーズ』で飲んでるけど行く?」「早稲田の同期が飲んでるけどどうする?(元)ラグビー部でちょうど4人!」と対戦カードの協議。

トイレに行きそびれたメンツはLINEという名のオンライントイレでリモート参加。

数多の現場経験を積んだおかげか、独身と偽って合コンに紛れ込む「人狼」を暴き出す嗅覚も身についた。

合コン現場で見事に伴侶を見つけて家庭を築いた子もいる。


みんなの記憶に残る夜になるかどうかは、女子の連携の強さと事件の数がものをいう。

べろべろに酔った後に自分から男の家に行き、なぜか靴をなくしてリラックマの靴下で女子反省会の『すしざんまい』に合流した子、セパ(セクハラパワハラ)両リーグ制覇上司のもとで悩んでいるとき、バーで隣の卓の女性と意気投合し、そのお姉さんの会社に引き抜かれてスピード転職を果たした子。

書くのもはばかられるような汚い事件もちらほら。

仲間内でバカをやって、ドラえもんのように地面から3ミリだけ浮き足立って、今宵の出会いにひとさじのロマンスを期待する。

西麻布遊園地や六本木動物園でワイワイするのが社会人の青春だった。


もちろん仲間内でも、嫉妬や恨めしさのような薄暗い感情が交差することはある。

彼から誕生日にもらったアルハンブラ、ボーナスで買ったカプシーヌMINI、親から受け継いだトリニティリング。

調子の悪いときは友人の友人のアカウントまでインスタパトロールをし、自分の持ってないものを「ひとーつ、ふたーつ」と皿屋敷のごとく夜な夜な数えた。

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