一緒に食事会へ行く仲間がいない…!?
裕二と別れた翌週。私は友人の美穂とともに、グランドハイアットの『オーク ドア』でランチをしていた。
彼女は港区での遊び方を教えてくれた人であり、戦友でもある。出身地も大学も違うし、年齢も1つ年上だけれど気が合うのだ。
実際、20代後半の週末はずっと一緒に過ごしてきた。美穂と参加した食事会は、まさに星の数ほどある。
「…ということで、誰かいない?今、大至急で彼氏募集中なのよ」
大きな窓から心地よい風が吹いてくる。そんな彼女の隣には、昨年生まれたばかりの凛ちゃんがベビーカーの中でスヤスヤと寝ていた。
「そう言われてもねぇ…。ご存じの通り、今は子育てが忙しくて飲みになんて行けてないし」
それはそうだろう。凛ちゃんはまだ生後6ヶ月で、手がかかる時期。それに美穂は、毎週末飲み歩いていたとは思えないほど、もう立派なママになってしまったのだ。
「美穂はいいよね、素敵な夫をゲットできてさ」
「まぁね。でもあの食事会、沙羅も一緒にいたじゃない」
彼女は羽振りがいいことで有名な、20歳も上のおじさんと結婚した。
今日もベビーカーには無造作にエルメスのケリーがかかっていて、指にはハリーウィンストンの大きな指輪が光っている。
「いいなぁ…」
「でも裕二さん、突然どうしたんだろうね。沙羅と裕二さんも、結婚するかと思ってたのに」
「それは私も思ってたよ~」
結局、フラれた理由もよくわからない。ただ単に愛情がなくなったのか、他に好きな人でもできたのか…。聞きたいけれど聞けない自分がいる。
「沙羅はスタイルも抜群だし、美人だし。また婚活市場に戻っても余裕でしょ!」
実は美穂の言葉に、まんざらでもない自分がいた。
身長163cmで、細身。脚が綺麗だと褒められることも多いし、美人だと言われてきた。Instagramに投稿する度に「お綺麗ですね」とか「美人すぎて憧れです」といったコメントがつく。
「さすがに、美穂を飲みの場に連れて行くわけにはいかないもんね…」
「行きたいけど、今は無理かなぁ。他に誰かいないの?一緒に夜遊びできる女友達」
いることにはいるけれど…。気づけばこの自粛期間中に、みんな結婚していた。そして既婚者の友達には、子どもができていた。
未婚率の上昇や少子化のニュースを疑ってしまうくらい、アラウンド35の女たちを取り巻く環境は、急激に変化していたのだ。
― あれっ。私、夜に遊んでくれる友達いなくない?
みんな家に入り、子どもができ、夜遊びできる友達はいつの間にか消えている。愕然としていると、見兼ねた美穂がスマホを必死にスクロールしてくれていた。
「沙羅。この子と連絡取ってみたら?私たちより8歳くらい年下だった気もするけど…。まだ現役で遊んでるはず!顔も広いし、いい子だよ」
そう言うと、彼女は萌ちゃんという可愛い女の子を繋げてくれた。
そして翌週には、萌ちゃん主催のお食事会へ行けることになったのだ。…けれどもそこに参加した私は、完全に“浦島太郎”状態だった。
この記事へのコメント
あのキューティーのように、自分の借りられる範囲で6畳一間のボロ家とか賃りて、派遣でも何でも始めた方が良くない?
グラスであったかな?って、この男もケチくさいなぁ。シャンパン頼んじゃ悪いのかよってね。
沙羅、頑張れ!
来週はハイブランドのバッグをバカにされる展開かな?嫌な思いをしてまでお食事会に行くことないのにねぇ。