2022.07.25
公園の魔女たち〜幼受の世界〜 Vol.1敦子さんとマリエさんとママ友になったのは、約1年半前。
私の一人娘・華が生後3ヶ月になった時に、産後の孤独を紛らわせるために通い始めた知育教室・ベビーカレッジ広尾校での出会いだった。
敦子さんのところの翔子ちゃん。
マリエさんのところのエミリちゃん。
それから私、葉月とうちの華。
少人数制で、同じクラスにはこの3人だけ。
たった3人のクラスということで仲良くなった私たちは、それ以来こうしてしょっちゅう、ベビーカレッジの後に有栖川公園で子どもたちを遊ばせている。
いつもなら、ナショナル麻布でおやつを買って、他愛もない話をして過ごす穏やかな時間。
だけど、この日は違った。
マリエさんが、寂しそうな顔で私に言う。
「葉月さん、実はね。エミリ、翔子ちゃんと一緒に、来週でベビーカレッジ辞めることになったの」
「えっ、そうなの?」
驚く私に、敦子さんも残念そうに眉を下げる。
「実はね。うちとマリエさん、幼稚園お受験塾がたまたま一緒なの。翔子はもう、生まれた時からお世話になっているんだけれど…。エミリちゃんは先月からご入会されたのよね」
「そうなの、偶然」と、横でマリエさんがうなずいている。敦子さんは言葉を続けた。
「それでね。もう11月からは、4保のカリキュラムが始まるじゃない?その4保クラスの曜日が、ちょうどベビーカレッジと同じ時間に被ってしまうのよ。
だから、残念だけど、ベビーカレッジは卒業ということになってしまって」
そう言って敦子さんは、寂しそうな表情を浮かべる。けれど私は、別れを惜しむよりも先に、耳慣れない言葉を確認したかった。
「ねえ?“よんほ”…って何?」
「4保っていうのは、3年保育の幼稚園に入る1年前の年齢ってこと!つまり、幼稚園受験をする学年のことを、便宜的に4保って呼ぶの。
ちょっとぉ〜、葉月さん本当に何にも知らないみたいだけど、大丈夫?心配になってきちゃったよ!」
ざっくばらんな物言いで、マリエさんが説明してくれる。
マリエさんは、私より5つ年上の40歳。元地方局のアナウンサーという輝かしい経歴を持っているのに、誰にでも気取ることなくフレンドリーな人だ。
一方の敦子さんは、33歳。ご実家は老舗のお菓子屋さんで、旦那様は商社マンだけれど、幼稚舎出身で有名な政治家一族だったはず。
年下ながら私たちの中で一番しっかりしていて、いつでもニコニコと笑顔を絶やさない敦子さんだが、この時ばかりは心の底から心配そうな顔で私に問いかける。
「葉月さん。本当に、華ちゃんの小学校受験は考えてるのよね?
たしか葉月さんもご主人様も、大学は慶應のご出身でいらっしゃったと思うけど…。幼稚舎は受けないの?」
敦子さんからの問いに、私は思わず固まった。というのも、あまりにも話題がタイムリーだったから。
ちょうど昨晩、私と夫の大樹は、華のお受験について話したばかりだったのだ。
◆
「華ちゃんは将来なにになるのかな〜?女優さんかな〜?それとも社長さんかな〜?」
「あら、お医者さんって言わないのね?」
華に向かって甘い声を出す大樹を茶化すと、大樹は優しい顔で言った。
「そんなの全然いいよ。俺、ただの勤務医だし。親もサラリーマンで継ぐものもないし。華ちゃんにはただただ、のんびり幸せに過ごしてほしいよ。
あ、でもさ…」
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