ごめん、今日も遅くなる。 Vol.5

店を出た途端、女は彼氏に向かって泣き叫び…。幸せなディナーデートがぶち壊しになったわけ

その時ウエイターが近づいてきて、空いたグラスに水を注ぎ入れた。

「そろそろ出ようか、柚」

「え、待ってよ」

賢也はお会計を終えると、一言も口をきかずに先に歩いて行ってしまった。

なんとか追いかけ、エレベーターで地上に降りる。

外に出ると、予報にはない細い雨が降っていた。賢也は、雨に構わずずんずん歩いていく。

「待ってよ!賢也、なに怒っているの?」

「別に怒ってない」

「怒ってるじゃない。置いていかないでよ」

― こんなくだらない言い合いをするためにディナーに来たのではないのに。

雨に濡れるネックレスに触れながら、悲しさと悔しさが押し寄せてくる。

「ねえ、正直に答えて」

「なに」

「最近帰りが遅かったのも、お盆の予定を立てたがらないのも、仕事が理由じゃないんじゃないの?」

賢也は、歩みを止めて振り返った。迷惑そうに眉間にしわを寄せている。

「ねえ、私わかってるの。仕事じゃないよね?違うよね?」


「なんで?」

「知ってるのよ、全部」

その瞬間、賢也の表情は「不機嫌」から「不審」に変わった。

柚は、軽蔑されないようにあくまで偶然を装う。

「銀座シックスの前で、偶然賢也を見かけたの。その日賢也は休日出勤って言って家を出たのに、女の人といたわ」

睨みながらも涙が出てくる。

「一体どういうことなの?なんか言ってよ」

「ごめん」と、賢也は真顔で言った。

「ほんとにごめん。俺が悪い」

賢也は柚に背を向けると、天を仰ぐように顔を上げた。しばらく、お互いに何も言わなかった。

「でもさ」

柚が、ゆったりした口調で話しかける。

「最近は早く帰ってくるもんね?」

「…」

「その女の人とは、終わったんでしょ?」

賢也は、ゆっくりとうなずいた。

「じゃあ二度としないって言うなら許してあげるわ。でも、二度目はないからね」

どこかで聞いたようなセリフで釘をさす。しかしそのとき、賢也は早口で言った。

「柚、別れよう。ほんとにごめん」

遠くから来たタクシーのライトが、賢也の右頬をかすかに染める。それに気づいた賢也は手を上げた。

「悪いけどさ、先帰っててよ」

「え。待って、別れるって?どうして?もう彼女とは終わったんでしょう?」

「ごめん」

わからない、と柚は思う。

タクシーが目の前で速度を緩める。

ドアが開いたそのとき、賢也はとんでもない一言を放った。


▶前回:彼氏の浮気を、気付かぬフリで泳がせていたら…。同棲中の部屋で女が目にした予想外の光景

▶1話目はこちら:「あの女を、誘惑して…」彼氏の浮気現場を目的した女が、男友達にしたありえない依頼

▶Next:6月24日 金曜更新予定
賢也から、予想もしないことを言われ…

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この記事へのコメント

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No Name
最後、「もう彼女とは終わったんでしょう?」とか、その発言ちょっとやばいよね。そこまで知ってるっておかしいと思われる。
更に、自分がフラれたことをわからないとか思う柚、どんだけマヌケなの?
2022/06/17 05:3060返信5件
No Name
離れた気持ちって、そう簡単には戻らないんですよね〜。それで、ヒステリックになられたら、誰だって別れたくなりますわ。お盆の予定を今すぐ決めようとか、必死すぎてウザいだけなのに。
2022/06/17 05:2752
No Name
柚に飽きてるんなら別れてから次探せばいいのに。彼女持ちの男に口説かれてもキモいだけだし。
2022/06/17 07:3243返信3件
No Name
柚、やっぱりフラれた。ざまぁ…
2022/06/17 05:2235返信5件
No Name
先週、あれから夕ご飯何作ったのか気になったけどなぁ😂
まぁ所詮、飯炊き女だからね。穂乃果の気持ちが創に向けば、賢也の気持ちも戻ってくるとか勘違いした柚が幼稚なだけ。
2022/06/17 05:2423返信2件
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