2022.05.20
SPECIAL TALK Vol.92海外への興味を募らせ、模擬国連と出合う
金丸:ところで、今はアフリカを拠点に活動されているわけですから、どこかで海外に興味を持たれたんですよね。
原:最初に意識したのは中学1、2年生のときです。
金丸:いったい、何がきっかけで?
原:フィリピンのスラムに住む子どもたちを取り上げたNHKのドキュメンタリー番組です。子どもたちがプラスチックや鉄くずを拾い集めて、お金に替え、家族を支えていました。
金丸:それを見て、かわいそうと?
原:いえ、かわいそうとはちょっと違っていて。そのとき、一番下の、私より8つ年下の妹と一緒に見ていたんですが、スラム街で生きる子どもたちが妹と同じくらいの年頃で、「妹はこんなことできるだろうか。妹にこんなことはさせたくない」と思ったんです。
金丸:その年で自分の身近なこととして考えられることが、すごいと思います。原さんは昔から世の中のおかしいこと、理不尽なことに対して疑問を持ち、反応するタイプのようですね。
原:海外への興味は、中学3年生でさらに強くなりました。カナダ人の先生と脳科学に興味のある日本人の先生のふたりでされている英会話教室が、当時地元で話題になっていて。
金丸:聞くだけで面白そうです。
原:受験用の英会話ではなく、生きた英語を学んで、話せるようになるのを目指した教室でした。TOEICではなくTOEFLの勉強を軸に、留学を視野に入れた指導をしていて。そこでものすごく感化されて、私も高校留学したいと考えるようになりました。
金丸:実際、留学はされたんですか?
原:それが、父に反対されました。ただ、頭ごなしにダメだと言われたのではなく、「いきなり海外に行かなくても、もうちょっと日本でできることがあるでしょう」と。それで、地元の今治西高校に進学し、留学を目指してひたすら英語を勉強しましたね。
金丸:では大学では、今度こそ海外に?
原:カナダのブリティッシュ・コロンビア大学に行きたかったので、TOEFLを受けに広島まで行っていました。ただ、日本の大学は4月入学ですが、海外の大学は9月なので、半年のズレがあります。すると父が「だったら、日本の大学も知らずに海外に行くより、半年間でも通ってみたらいいんじゃないか」と。
金丸:さっきから、お父様が留学を阻止されている(笑)。だけど、お父様の指摘もごもっともです。
原:だから反論できない。それで入学したのが、東京外国語大学でした。そして留学前提だったはずが、模擬国連のサークルに出合い、留学そっちのけでハマってしまって。世界中の高校生や大学生が取り組んでいる活動なのですが、日本国内でも学生一人ひとりがいろいろな国の大使になり、国際会議をシミュレーションするんです。
金丸:スピーチや交渉、根回しの能力など、いろいろ鍛えられそうですね。
原:会議自体がすごく楽しかったし、毎年、ニューヨークの国連本部で世界中から学生が参加して大会が開催されています。大会には日本から代表団が10名くらい派遣されますが、アメリカに行くための資金も企業を訪問して自分たちで集めないといけないし、プログラム作りも宿泊予約もすべて自分たち。サークル活動とはいえ、ほとんど仕事みたいで、それが楽しくて楽しくて。私も2年生のときに団長として参加しました。
金丸:団長としてってすごいですね。今までのお話を伺っていると、原さんは正義感にあふれた学級委員長タイプで、私のような男子から見ると、とてもまぶしい存在です。
本部と現場をつなぎたいと、ひとまず外務省へ
金丸:国連といえば、ロシアがウクライナに侵攻したことをきっかけに、国連の話題が増えました。特に「安全保障理事会では、常任理事国のうち1ヶ国でも反対すれば重要事項が決定できない。国連の意義とはいったいなんだ?」と問われていますよね。
原:そうですね。侵略や暴力は絶対容認できませんが、模擬国連に関わった学生時代から、しばしば考えていたのが「普遍的価値ってなんだろう」ということです。多くの国があってさまざまな立場がある中で、西側諸国が絶対正義なのか、民主主義が絶対正義なのか、と。
金丸:誰かにとっての当たり前が、ほかの誰かにとっての当たり前かというと、それは違います。それからウクライナに対しては、日本人もものすごく関心を持っているじゃないですか。でも世界では、ウクライナ以外でも各地で紛争が起きています。そういう人たちに対して、同じくらいに関心を持っていたわけではありません。
原:日本政府はウクライナ避難民を積極的に受け入れていますが、「どうしてウクライナだけ?」と、不公平に感じる人もいるでしょう。ミャンマー、シリア、アフガニスタン、それ以外にも多くの国から日本に避難してくる人々が、どう感じるかと思うと胸が痛いです。
金丸:そのような政治判断を下すには、いろいろな軸がありますが、日本の場合、哲学とか確固たる軸のようなものが残念ながら見えません。
原:ただ「日本政府は国際協力といっても、お金しか出さない」と批判されることもありますが、日本も世界に向けて結構良い働きかけをしているんですよ。私が大学時代に研究していた「ヒューマン・セキュリティ」、つまり人間の安全保障というコンセプトを提唱したのは、実は日本なんです。「ポリティクスを抜きに、人間を中心に置いて、その人の命の尊厳を守るために世界は動くべき」。それを実践できるかというと、もちろん難しい。でも、そういうコンセプトを提唱して呼びかけていることや、青年海外協力隊の活動が高く評価されていることも、世界各地の人々の話を伺うたびに実感します。
金丸:大学卒業後は外務省ですが、やはり模擬国連の影響ですか?
原:はい。模擬国連を通じてさまざまな業界で活躍されている方たちの話を聞くうちに、どの業界もどの分野も、予算を握っている本部と現場の間で話がかみ合わず、いがみ合っていることに気づきました。同じ組織でゴールは共有しているはずなのに、お互いに「あいつら、分かっていない」って。
金丸:よく分かります。
原:それがもったいないなと思って、そのギャップを埋められるような人材になりたいと。そういう仕事ができそうで、一番難しいところはどこだろうと考えると、外務省でした。
金丸:外交官の試験はすごく難しいと聞きます。
原:大学に行きながら試験勉強のための学校に通って、ダブルスクールでめちゃくちゃ勉強しましたね。ただ、いざ入省してみると、「ちょっと現場から遠いぞ」という感覚がありました。国連の安全保障理事会の担当として働いていたのですが、私がいるのはあくまでも霞が関。ニューヨーク本部からも数々の現場からも遠く離れている。なので、入省3年目の留学をさせてもらえるタイミングで、現場寄りの体験ができそうなアメリカのコロンビア大学へ留学希望を出しました。
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