東京レストラン・ストーリー Vol.13

大企業勤めじゃないと、結婚もできない…。就活に失敗した27歳・上智卒男の劣等感

レストランに一歩足を踏み入れれば、私たちの心は一気に華やぐ。

なぜならその瞬間、あなただけの大切なストーリーが始まるから。

これは東京のレストランを舞台にした、大人の男女のストーリー。

▶前回:案外、幸せは近くにあったけれど・・・。26歳男が、どうしても忘れられない女性とは


Vol.13 慶太(27歳)の葛藤


彼女との約束の10分前、僕は『マンダリン オリエンタル 東京』のエントランスに立っていた。

ほの暗い照明のエレベーターに乗って37階で降りると、そこには初夏の柔らかい陽の光の差す空間が広がっていた。

今日は、僕の転職祝いに、彼女の知紗子が予約してくれた『センス』でランチの予定だ。

「おいしい点心が食べたい」という僕のリクエストに応えてくれたのだ。

お店の前に着き、周りを見渡したがどうやら彼女はまだ来ていないようだ。

『お店に着いたから中で待ってるね』と僕はLINEして、チャイナドレスを颯爽と着こなすスタッフに声をかけ、レストランの中に足を踏み入れた。

高い天井と、落ち着いたインテリアにピンクが映える空間。自然と背筋も伸びる。

僕は、今は小さな生命保険会社に勤めている。だが来月から、希望以上のポジションで世界的に有名な外資の同業他社で働くことが決まっている。

上智大学の学生時代は、やりたい仕事なんてなかった。そんな気持ちが表れてしまったのか、有名企業の面接はほぼ全滅した。

なんとか今の会社に決まったが、正直知名度が低く肩身の狭い思いをしてきた。

「あいつなら、もっと大手行くかと思ったけどね」と大学の同期がこっそり会話しているのを聞いてしまい、ショックを受けたこともある。

悔しくて「与えられた場所で頑張ろう」とがむしゃらに働いてきた。

転職が決まった今、僕は、ようやく自信を持つことができた。『マンダリン オリエンタル 東京』のようなラグジュアリーホテルに入っても堂々と振る舞える気がしている。

僕は席について、窓の外に見えるスカイツリーを眺めた。周りに高い建物がない分、高さが際立っている。

しばらくすると、知紗子が小さく手を振ってこちらに歩いてきた。

この記事へのコメント

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No Name
素敵な話。
2022/05/28 05:1599+返信4件
No Name
慶太の劣等感を理解した上であえて自分からプロポーズした知紗子、ステキ過ぎです。
この2人なら絶対上手くいくね! 
や、本当にレストランストーリーは内容が素晴らしい♡
2022/05/28 06:0399+返信1件
No Name
知紗子本当に素敵な人。どこを取っても育ちの良さが出ているね。逆にウジウジした慶太でいいの?と思った位。
2022/05/28 05:2277
No Name
心温まる素敵なお話でした。
この素敵な逆プロポーズに感動。
2022/05/28 05:5845返信2件
No Name
久しぶりに感動して泣けた🥺 素晴らしいお話!
2022/05/28 05:5540返信5件
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