同じ宮城で一緒に過ごした姉も、もうすっかり“中目黒の女の子”だった。
昼に起きてマスカラをゴリゴリに塗り、一緒に商店街から駅周辺を歩く。そこは昔ながらのお煎餅屋だったり、洒落た古着屋やヘアサロンが混じり合った亜空間。
おばあちゃんやママチャリに乗った人とすれ違いながら、鮨屋の前を通りかかれば「あー鮨もええなあ」と口に出る。
目黒川を渡り『パーグラムマーケット』という、計り売りの古着屋を私に教えてくれた。
軽ければ安く、夏物のワンピースなんかが千円とかで買えちゃうので、姉と「このピンクかわいいな」「このTシャツの柄やばくない?」とか言いながら盛り上がる。
そして姉がバイトしているオーガニックカフェに到着し、初めてカフェごはんを食べた。
姉の家には女の子たちがよく遊びに来るようで、私が滞在しているときも何人かきていた。同い年の子もいて、彼女は私より随分と大人っぽく、そして垢抜けて見えた。
モデル志望なのか「これ、撮ってもらったポートレート。笑顔よりミステリアスな感じでやってみた」てな話を姉としている。姉は「ええやーん」と言いながら写真を1枚手に取り、なぜか冷蔵庫に貼り付けていた。
「今度師匠について現場行けることになった!テレビの現場!」と喜ぶスタイリスト志望の女の子の声もする。
「今日は鍋にしよかー」と姉が言い、手慣れた様子で鍋を作り女の子たちとつつく。「沁みるね〜」「夏も鍋は最高」とか言いながら。
年上の女の子たちはプシュッとビールを開けている。「旨いわぁ」と、お金はそんなにないはずなのに、なぜかビールはプレモルだった。
「みんな美味しいものが好きなんだな。美味しいものが好きって、山田詠美の小説の女の子みたい」と〆のラーメンをすすりながら、私は彼女たちの美しい横顔を眺めつつ思ったのだ。