話す内容は「気になっている人にどんなメールを送ればいいか」や「昔出会った、または現在進行形のヤバい男」が多かった。
友達に気になっている人がいれば、みんなでその人のSNSを見てはやんや言い、最終的にはなんの根拠もない「行ける行ける、大丈夫!メールしよう!」と繰り出される。
ヤバい男の話はみんな話し慣れており、芸能人のエピソードトークばりにしっかりオチまでついている。
同じメンツで会うから「ねえまたあいつの話してよ」とおねだりすることも。
セクハラめいた自作の歌を送り続ける男に、なぜか「お抱え占い師にしてください」と懇願し、バイト先にタロットカードを持って現れた男。
毎回誘いが高いシティホテルのバーで、下心が見えすぎの男。決め台詞が「○○ちゃんの新しい扉を開いてあげる」の男…。
みんなどこか傷つけられていて、でもそれを「傷ついた」と真正面からは言えなくて、笑い話というコーティングをかましてみんなで笑ってやり過ごしていた。
東京に住み続ける不安もあったはずだ。私も将来本当にどうなるんだろう、と頭を抱えて1人泣く夜もあった。
彼女たちは18歳の私が憧れたような女の子たち。みんな自由に見えて夢を持っていた。「夢を持っている」その姿が私を引きつけてやまなかったのだ。
「夢を追いかけるなんて非現実的じゃん」なんて冷笑仕草はない。
「夢を語ると馬鹿にされてしまう」私はずっとそう思っていたけど、厳しい社会で生きる彼女たちにあるのは夢を持つ自分への誇りだろう。
だから彼女たちは、夢を持つ他者を切り捨てたりしない温かさがあった。もちろん男の子にも。
中目黒の女の子はただキラキラしているように見えるかもしれない。でも、私の友達は酸いも甘いも味わって、日々を懸命に生き抜いていた。
私は彼女たちに魅了され、許可を得てブログに綴る。
キラキラしたように見える女の子たちは、勝ち組だなんて揶揄されるけどそんな簡単な話じゃない。彼女たちは生身の人間で、傷つきながら、笑い、泣いて、誇り高く暮らしている。
そんな友人の様子を“負け美女”というタイトルで本にして、私はとうとう夢を叶えるのだけど、あの時代の自虐ワードが今はしっくりこない。
彼女らは“負け美女”じゃなくて、誇り高き“中目黒の女たち”なのだ。
1981年、大阪府生まれ。
仙台のファッション誌編集者を経て、美人なのに恋愛で負けている女子たちの生態に迫った『負け美女 ルックスが仇になる』で、2011年にデビュー。現在はTV、ラジオ、雑誌など幅広いメディアで活躍中。
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