上京後、中目黒に16年間住んだというエッセイストの犬山紙子さん。
物書きとしての夢を中目黒で追いかけ、この街を“東京の原風景”と語る彼女に「中目黒の女たち」について、エッセイを書き下ろしてもらった!
夢を追いかけることを許し、包んでくれる中目黒
中目黒にいる女の子たちが大好きだった。
住んでいる人も、飲みに来ている人も。働いている人も、好きな人に会いにきている人も。ひと括りにできないはずの人たちなのに、みんな自由に見えた。自分の夢に正直で、それを隠さない。
宮城からやってきた私はその子たちと同じように振る舞いたかったし、同化したかったんだと思う。
自分を外から見ることはできないから「私は中目黒にいる女の子に見えるだろうか?」と思いつつ、16年間も中目黒に住んだ。マンションはその間3回変わったけど、この街を出るという選択肢は全くなかった。
初めて自分の意思で東京に行ったのは大学1年生の夏、18歳。
門限などかなり厳しい家で育った私は、そもそも泊まりに出かけることすら難しかったのだが、姉の家ならと許しが出て、目黒銀座商店街のそばのワンルームの姉の家を訪ねたのだ。
中目黒の駅についた瞬間から私は興奮した。いる人たちがみんなお洒落でかわいくて「公共の場でこんなにお洒落なのか?」とたまげたのだ。
いや、仙台にもお洒落な人はたくさんいる。でも日常にお洒落が溶け込んでいることに驚いたのだ。
日常が洒落ているってことは、近所の病院に行くときとかにサッと着るTシャツやサンダルが妙にしっくりきていて格好いいってことなんでしょう、すごい。