― 絶対に今日、告白される…。
2軒目には誘われなかったものの、2人でタクシーに乗った時に手をつながれた。
「運転手さん、六本木まで」
「えっ?」
てっきり私の家まで送ってくれると思っていたら、彼が告げた行き先は六本木にあるホテルだった。私は驚いて彼を見る。
「え、どうしたの?」
二宮は聞き返してきた。ここで断ったら、もう次はないかもしれない…。
私は、清純ぶる必要もないと思い、彼についていくことにした。
― 大人はいちいち交際宣言をしない。それだけのことよね。
自分に言い聞かせ、二宮の肩に頭を乗せた。
麗美を自宅に入れなかった理由~二宮の場合~
シャワーを浴びてホテルの部屋に戻ると、ダブルベッドの真ん中で女が寝息を立てている。
彼女は麗美。ほんの数時間前に出会ったばかりだ。
その顔は無防備で可愛らしいとは思うが、愛しいなどとはもちろん感じない。
「顔は可愛いし、体もいいんだけどね~」
僕はつぶやくと、服を着て静かにホテルの部屋を出た。もちろん朝まで一緒に泊まるなんてことはしない。
そんなことをしたら女性は勘違いして、その後しつこく連絡が来るのが目に見えている。
『麗美ちゃん、支払いは済んでいるからチェックアウトまでゆっくりしていってね』
そうメモを残し、エントランスのタクシー乗り場へ向かった。
きっと麗美と朝ここを出たら、『ブリコラージュ ブレッド&カンパニー ダイニング・カフェ』でコーヒーとクロワッサンでも食べていこうと言われていただろう。
麗美は一応知り合いの紹介ではあるが、場を華やかにする“飲み会要員”なだけ。
経営者の男友達がたくさんいて、自分もその仲間だと思っている。
でも、実際はそうではない。
僕はタクシーに乗り「青山二丁目の交差点まで」と告げる。
自宅は青山だが、家に呼ぶのは気が引ける。恋人がいるからではなく、よく知らない子に家を知られるのは避けたいのだ。
ノリが良く、フットワークが軽くて美人で酒が飲める。それだけならまだよかった。
麗美の場合、何を勘違いしているのか僕たちと同じ立場で意見してくるのだ。
そこにリスペクトを感じないし、かといって女の子らしさもない。それが彼女のことを無理だと感じた理由だ。
正直な話、そこまで言うなら自分も会社経営してみればと思うし、アドバイスされればされるほど、引いてしまう。
男性側が、もっと年上の50~60代ならば何を言っても許され、可愛がってもらえるかもしれない。麗美がそういう男性を好むかは別だが。
興味を持って話を聞いてくれるのは嬉しいし、芯があって自分の考えを持っている女性は大好きだ。
しかし、そこのラインを越えてしまうとただのウザい勘違い女になってしまう。
僕はタクシーの中で、麗美とのLINEのトークルームをそっと削除したのだった。
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