甘い墜落 Vol.9

婚約中なのに、年下男子と二股を楽しむ女。ある夜、勘付いた婚約者から「話がある」と切り出され…

「彼以外を、好きになってはいけない」

そう思えば思うほど、彼以外に目を向けてしまう。

人は危険とわかっていながら、なぜ“甘い果実”に手を伸ばしてしまうのか。

これは結婚を控えた女が、甘い罠に落ちていく悲劇である。

◆これまでのあらすじ

結婚相手を探してさまよう美津は、大介と守の2人とこっそり二股交際をしている。「どっちも遊びじゃない、あくまで真剣な交際」そんな結論に辿り着いた彼女は、悪気もなく今の状況を楽しんでいた。

▶前回:「複数相手がいても、たいした問題じゃない」浮気中の女が保身のためにすがりついた、とんでもない考え方とは


時計は20時。

美津は満足げに伸びをして、オフィスチェアから立ち上がった。担当しているお花見特集のゲラチェックが、全て完了したのだ。

― あー今日は頑張った。寒いし、タクシーで帰ろうかな。

「空車」の表示を探して右手を上げると、タクシーはすぐに捕まった。

「神泉まで」

運転手に告げ、動き出したタクシーの中で目をつむる。心地よい車体の揺れを感じながら、人知れず笑みをこぼした。ここのところ、毎日が楽しくて仕方ないのだ。

― あー、恋愛って楽しいな。仕事より、全然楽しいかも。

経済誌で毎日朝から深夜まで働いていた頃が、遠い昔のように思える。2人の男から大事にされる日々は、率直に言って気分がよかった。

『疲れたからタクシーで帰るね』

家で待っている大介にLINEを送ったあと、『お疲れさま、金曜だね』と守にLINEをする。

罪悪感は、そこまでない。少しでも罪の意識が芽生えたら、美津はそのたびに篤志の存在を思い出していた。

― あんなに遊んでる篤志さんが楽しそうに生きているのよ。だったら、私だって悪くないわ。私はただ、自分の人生を真剣に考えてるだけ…。

そう自分自身に言い聞かせ、甘いだけの現実にうっとりするのだった。

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