婚約破棄
私は、父はサラリーマン、母は専業主婦というごく平凡な家庭で、2つ年下の妹とともに育った。神奈川の県立高校から立教大学に進学し、卒業後は、信託銀行の支店で主に富裕層向けのコンサルティング業務をしている。
そんな私がプロポーズを受けるのは、社会人7年目の29歳にして、今回で2度目だ。
1度目は25歳の時。相手は、立教時代の同級生で証券会社に勤務していた彼。
しかし、挙式の日取りと場所が決まった後に、彼の実家の金銭トラブルが発覚し、私の両親が激怒。そこから両家の親同士の大ゲンカに発展したのだ。
まだ社会人3年目だった当時の私は、両親の反対を押し切ってまで突き進む勇気がなく、結果的に、結婚式の10日前に婚約を破棄した。
ただその後も、お互い想いが断ち切れない私たちの交際は続いた。結婚後の新居として借りた吉祥寺のマンションで、3年あまり同棲をしていたのだ。
気づいたときには、私は28歳になっていた。
このまま不毛な恋愛を続けていても意味がないと、断腸の思いで彼との別れを決意した。
将暉との出会い
彼と別れた私は、幡ヶ谷の1Kのアパートで一人暮らしを始めたと同時に、暇な時間は婚活に費やすことにした。
そして、半年前、代官山の『アシエンダ デル シエロ -モダン メキシカーノ-』で開催されたお食事会で、1つ年上の将暉に出会う。
「春乃ちゃん、もしよかったら今度2人でご飯行かない?LINE交換しようよ!」
帰り際、将暉にそう言われ、連絡先を交換したあとはトントン拍子だった。
「帰り道が心配だから、後で家に着いたら連絡してよね!」と言われて別れたが、幡ヶ谷の自宅に着いた私がスマホを見ると、すでに彼から「家に着いた?」とメッセージがきていた。
返信すると、すぐに電話がかかってきて、翌週の金曜の食事に誘われたのだ。
彼の第一印象は悪くなかったので、私は二つ返事でオッケーした。
そして、初めて2人で食事に行った中目黒の『水炊き しみず』の帰り道、目黒川沿いを歩いている時に告白された。
一緒にいる時間は楽しかったし、自分の気持ちをちゃんと言葉にできる彼の実直な姿が好印象だったから、素直に嬉しかった。
しかし、将暉といざ付き合うとなると、戸惑いもあった。
婚約破棄という自分の過去に後ろめたさがあったこと。
そして、将暉と釣り合わないのではないか、という不安があったからだ。
彼は、開成高校から一橋大学に進学して、今はメガバンクの本社勤務。国立にある彼の実家は、西東京の地主で、ビルやマンションを複数保有しており、将来的には父親が社長を務める不動産会社を継ぐことになっているという。
将暉のスペックに魅力を感じる一方で、平凡なサラリーマン家庭に育った私。
いざ結婚となって、家柄が釣り合わないことが原因で、親同士がもめて破談になるなんて、懲り懲りだったから。
付き合う前から結婚のことを考えるなんて気が早いとは思ったが、私は将暉に胸の内を打ちあけた。すると、彼は「不安に思う必要なんてまったくないよ!」と優しく声をかけてくれたので、交際がスタートしたのだ。
この記事へのコメント
将暉さん日頃から母さんが母さんが…言ってた位だから、かなりど級のマザコンなんじゃないかな?