抱かれた夜、抱かれなかった夜 Vol.2

西新宿のタワマンに住んでいるのに、毎回デートでホテルを取る彼氏。友人から「怪しい」と諭されて…

「永遠の愛を誓いますか?」

「はい、誓います」

テレビから、耳なじみのある“あのセリフ”が聞こえてくる。婚活ドラマの最終話。ヒロインが涙するシーンに、私ももらい泣きしそうになっていた。

その隣でマンガを読んでいる拓也の顔をのぞきこんで、こう尋ねる。

「ねえ。いつか、永遠の愛を誓ってくれる?」

でも私の期待は、一瞬にして打ち砕かれた。

「俺、誓いの言葉って嫌いなんだよね。未来のことなんて、誰も約束できないでしょ?」

― えっ。私との結婚は、全く考えていないってこと…?

ショックを受けていると悟られないよう、テレビの方へ向き直る。

当時の私たちは、26歳。付き合って3年も経っていたから、少しぐらい結婚について考えてくれていると思っていた。

そうして「拓也との未来はない」と気づいた私は、すぐに彼へ別れを告げたのだ。

― 次に抱かれるなら、未来を約束してくれる男にしよう。

そう決めて、1年。ついに聖司と出会えたのである。



「ねぇ、聖司。私のこと…好き?」

「もちろん。誰よりも愛してるよ」

今夜も完璧な回答をくれる彼の胸に、顔をうずめる。

「そろそろ、聖司の部屋に行きたいな」

付き合って3ヶ月。私は一度も、彼の部屋に行ったことがないのだ。

「うん。でも俺の部屋何もないから、ホテルのほうがいいよ」

「そんなこと気にしないよ。来週行ってもいい?」

「…うん、わかった」

その瞬間。聖司の表情が、少しだけ暗くなったような気がした。



「それ、やっぱりおかしいってば」

ある金曜のランチタイム。同僚の絵里が、ハンバーガーにかぶりつきながら言った。

「だって3ヶ月も部屋に入れてくれないとか、ありえなくない?西新宿のタワマンに住んでるのに、近くのホテルを取る意味もわかんないし」

「私が部屋に行きたいって言ったのは、この前が初めてなの。最近引っ越したばかりで、ベッドくらいしか部屋にないって言ってるし…」

「え~、そんなことある?絶対、彼女がいるか既婚者だよ」

彼氏に浮気されて別れたばかりの絵里は、男性不信におちいっているからか、そんな言葉をかけてくる。

「今夜、彼の部屋に行く約束だもん。怪しいことなんて何もないって!」

絵里にそう言い残すと、私は仕事を早々に切り上げて新宿へと向かった。…しかし。待ち合わせ時間の20分前に、聖司からこんなLINEが届いたのだ。

seiji:ごめん、今日遅くなる。22時過ぎそうだから、別日にしてもらってもいいかな?

なんだか嫌な予感がする。平静を装って「了解!」と返信したものの、心臓はバクバクと音を立てていた。

それから1時間後。ちょうど会社を出た絵里と合流した。

「やっぱりおかしいって!」

彼女は目の前に座るなり、ランチタイムのときの話を蒸し返してくる。おもむろにスマホを手に取ると、私立探偵かのように検索を始めた。

「聖司くんの名字ってなんだっけ?病院のホームページしか出てこないな。…あっ!」

数分後、絵里の指が止まった。

「彼って、都内の医学部出身?」

「そうだけど」

「…これ見て」

彼女のスマホには、Facebookの画面が表示されている。そこには、聖司と同姓同名のアカウントが7人ほど並んでいた。そのうちの1人をクリックする。

アイコンは空の画像だが、プロフィールにはローマ字でseijiと書かれていた。

― 嘘でしょ…?

タイムラインを見て言葉を失った。そこには、私の知らない聖司の姿があったのだ。

【抱かれた夜、抱かれなかった夜】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo