2021.10.12
和食の要といえばお出汁。今まで、“引き立て”のお出汁を味わったことはあるだろうか。
引き立てのお出汁は、日本人の本能に訴える上品な香りを放つ。特にカウンターにて目の前で作られるものは、上質な和食店でしか堪能できない贅沢なのだ。
今回は会食はもちろんデートにもぴったりな、お出汁の真髄を楽しめる和食店を紹介する。
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※コロナ禍の状況につき、来店の際には店舗へお問い合わせください。
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削りたての鰹節の芳香に、和食の奥深さを新たに知らされる
『炎水』
店主の伊藤龍亮さんは『龍吟』に9年半勤め、後半は副料理長として焼き場を任されていた。独立すると昨年12月に『炎水』をオープン。
「料理人が一番美味しいと思った瞬間のお出汁を味わっていただきたい」と、語る。つまり一番美味しいお出汁とは、伊藤さんの味見と同じ状態の一番出汁のことだ。
せっかくカウンターで鰹節を削った出汁を通常のように濾してしまっては、フィルターで失われる香りがあると思ったそう。
そこで、鍋からお玉ですくって特注の器に注ぎ、ゲストに体験してもらうというスタイルに行き着いたのだ。
「出汁について、誰も掘れないようなところまで掘り下げていきたい」と、その魅力を新たな視点で伝える心意気でいる。
食材との親和性を尊重した引き算の美学で魅せる
「茄子と蒸し鮑のお椀」。
鰹昆布出汁に合わせたのは、揚げてから炊いた水茄子と下田産の蒸し鮑。調味料は使わずに、素材の奥深さで味わいを構成している。
鰹節を大量に使用し、短時間で仕上げているからこそ、雑味が出ずに鮑の香りも引き立つ。
使用するのは鹿児島県指宿市産の本枯節。
横幅が広くツルツルした断面が香り豊かな出汁の秘訣。削りたてを一枚食べさせてくれる。
◆
そのスタイルは鰹の粉が出ない長切れできる最高峰の鰹節を使用している証であり、カンナの完璧な切れ味も表している。
おちょこは利き茶をイメージした形で蓋付き。蓋を開けると優しくも奥深い香りが漂い、口をつけると鼻に直接香りが入る角度となり日本人の本能に訴える。
飲めば品のよい鰹の香りが喉もとから上がってくる。余韻まで贅沢なのだ。
焼きたての松茸をカウンターでさき、次に炭で淡路鱧の皮目を焼く。
松茸の芳潤な香りに鱧が少し焦げた香りが重なり、その二重構造の香りが空間に充満する。食す際はスダチ醤油で。コース 27,500円。
計算し尽くされたカウンターが、すべてのゲストに香りを届ける
中の調理場を狭くしたぶん客席を広くとったり、背もたれの高い椅子を選んだり、居心地のよさを追求した内装ゆえ香りに集中できる。
カウンターは鰹節を削る前提の設計。
時差なく一番出汁の香りを届けるため、板場と客席をフルフラットにした。素材は同じ木で統一。
この記事で紹介したお店
炎水
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