狙っていた彼からデートに誘われた!それなのに「2回目はナシだな」と思われてしまった27歳OLは…
それは1週間前に起きてしまった、ある事件のこと。
私のグルメアカウントに、1通のダイレクトメッセージが届いた。その送り主は、誰もが知る有名インスタグラマー・カケルさんだったのだ。
『いつも楽しくインスタ見てます!突然だけど、YUKIさんがずっと行きたいと言ってるお店が、明日2席だけ余ってるんだ。良かったら一緒にどうですか?』
「ええっ!あのカケルさんが、私をデートに誘ってくれた…?」
彼は最先端グルメに誰よりも詳しいインフルエンサーでありながら、30歳にして動画コンテンツ制作会社を経営するビジネスマン。
物知りでセンスが良くて、カッコよくて…。私がグルメインスタを始めるキッカケになった憧れの人なのだ。
フォローしてもらえるだけでなく、食事にも誘ってもらえるなんて。断る理由なんて1つもなかった私は、速攻で「行きます!」と答えた。
でも、迎えた当日。楽しみにしていたデートは、失敗に終わってしまったのだ。
会話は全く盛り上がらず、当然のごとく一次会で解散に。
悔しかった私は、それから毎日カケルさんのインスタをチェックしている。すると昨日は、どうやら他の女子とも出かけたようなのだ。
デート中、どんどんテンションが下がっていったカケルさんの顔を思い出すと、美味しそうなケーキを食べる気にもなれない。
私は大きくため息をつくと「もう、嫌なこと思い出させないでくださいよぉ…」と美波さんに泣きついた。
でも先輩から返ってきたのは、容赦ない言葉だったのだ。
「まぁ、しょうがないよね。彼の気持ち、わからなくもないもん。だって有希ちゃん、インスタと実物がちょっと違うからさ」
「ひ、ひどいー!」
思わずテーブルに突っ伏した私だったけれど…。本当は、自分でもわかっている。
インスタに載っている私は、まるで別人。
いつも食べ過ぎの罪悪感に悩まされているから、少しでも自分をよく見せるため、ちょっとやりすぎなくらい加工した写真を載せているのだ。
目は大きく。輪郭はシャープに。肌も色白に…。
そんなふうに加工した写真ばかり見ていたはずのカケルさんは、実物の私を見てどれだけガッカリしただろう。
あの日のデートが盛り上がらなかったのも、仕方ないのかもしれない。
でもツラすぎる現実が受け止められない私は、ついつい美波さんに八つ当たりしてしまう。
「っていうか、美波さんはズルイですよ!どうしていつも私と同じもの食べてるのに、そんなにスタイルいいんですか!?」
そう。いつも私よりたくさん食べているのに、今年31歳になる美波さんのスタイルは、まるでモデルのように抜群なのだ。
「もしかして、美波さんだけ特別な低カロリーメニューをこっそり出してもらってるんじゃ…?」
ありえない恨み節まで言い出す私に、彼女はますますあきれた表情を浮かべる。
そして、カバンから小さな袋を取り出しながら言ったのだ。
「別になにもしてないよ。いつも美味しいものを食べるときは、コレ飲んでるだけだってば」
「なんですか、それ…?」
金色に輝くパッケージには『3倍ぱっくん分解酵母プレミアム』と書いてある。
― そういえば美波さん、ランチのときもスイーツ食べるときも、いつもこれを飲んでいた気がする。
まじまじと袋を見つめる私に向かって、先輩はイタズラっぽく笑いかけてきた。