森脇慶子が薦める、初夏に食べたい極上の“旬” Vol.3

軽快な痺れが舌先に初夏を運んでくる

curated by
森脇 慶子

右.花山椒のしゃぶしゃぶ

花山椒

花山椒のしゃぶしゃぶ

海から遠く、三方を山に囲まれた盆地であるがゆえに生まれた京ならではの味のひとつが、花山椒。山に自生する山椒の木の雄花(因みに雌花の若い果実が実山椒)で、3月下旬から5月にかけて花開き、直径5ミリほどの小さな黄緑色の花をつける。

だが、この花が黄色く咲ききってしまっては時すでに遅く、蕾が膨らみ花咲くまでのわずか2、3日間が摘み時なのだとか。ほんの一時期しか採れず収穫量も少ない貴重品ゆえ、従来は木の芽の代わりに椀物や煮物のあしらいに使われたり、佃煮にするなどして珍重されている。

そんな高級食材を惜しげもなく用いた贅沢な鍋が、この“花山椒のしゃぶしゃぶ”。麻布十番『幸村』の春から初夏を彩る名物鍋だ。ご主人の幸村純氏曰く「主役は、あくまでも花山椒」で、牛肉はその花山椒の引き立て役。それゆえ、あえて脂肪の少ないロースや肩ロース肉を選んでいる。

花山椒をこれでもかと言わんばかりに投入した銅の鍋は、まさに花山椒の海。牛肉をサッとくぐらせ共に食せば、肉の旨みを捉えつつ、軽やかな痺れが舌先を刺激する。雅びでいて野趣あふれる逸品である。

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