リバーシ~光と闇の攻防~ Vol.4

「彼のためなら何でも…」上司に心酔する女が引き受けてしまった、禁断の仕事

初めての感覚


昨晩のこと。黒川の名前を聞いたひかりは、異様な警戒心を見せた。

「…大丈夫なの?何かされたりしてない?」

そんな訳の分からない質問に、秋帆は苛立った。言いたいことがあるなら言ってくれれば良い。

「何か知ってるなら教えてよ」

つい語気を強めて言い返すと、ひかりは、ワインを口に含みながら目を逸らした。

「…まあ、秋帆が良いなら。私が口を出す話じゃないか。ごめんごめん」

ゴクリ。

ワインを飲み込んだ音が、大きく響く。秋帆は、ひかりが喉まで出かけた言葉も一緒に飲み込んだと、直感的に思った。

「ごめん、ごめん。気にしないで。ねえ、私デザート食べたくなっちゃった。頼んでも良い?」

その後ひかりは、ビジネスや黒川の話には一切触れず、恋愛話や高校時代の思い出話ばかりを続けた。

その変わりように、秋帆の心は疑念を抱く。だが、ここまであからさまな態度だと、何かタブーに触れるような、そんな気もして、話を蒸し返す気にもなれない。

なんとなくギクシャクした空気が漂い始めたところで、ウェイターから「そろそろ閉店の…」と声を掛けられ、その場は終了した。

「じゃあ、私はここで。またね」

秋帆は、タクシーを捕まえようと大通りへ歩き始める。するとひかりが、「ねえ」と、後ろから呼び止めた。

「さっきは変なこと言ってごめん。…でも、本当に気をつけてね。それじゃ」

― 気をつける…?

夜ベッドに入っても、秋帆の頭から、ひかりの言葉が離れることはなかったのだ。


そんな昨夜の、ひかりとのやりとりが脳裏に浮かぶ。やはり思い切って尋ねよう。そうしないと気になって仕方がなかった。

「ひどいこと、ですか…?」

秋帆は、それがどんなことなのか想像がつかないまま、黒川に尋ねた。

すると彼が、「そんな深刻な顔しないでくれよ」と、大笑いした......


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