マテリアル夫婦 Vol.7

「一体どこ!?」出産間際に夫が行方不明に…。半狂乱になった27歳妻の決意

「リカさん、お待たせしました!今から硬膜外麻酔を打つので、横になって背中を丸めていただけますか」

しかし、体を滅多刺しにされるかのような痛みが引っ切りなしに訪れ、うまく体勢を整えることができない。

「……お産の進みがとても早く、子宮口が十分に開いています。麻酔を打たずに自然に分娩した方がスムーズかもしれません。今から麻酔を打っても、十分に効く前に産まれる可能性があります」

「もう、いいです…、なんでもいいので…、とにかく楽になりたい…」

もう既に、バキバキと音を立てて骨盤が砕けていくような感覚があった。苦しいのは私だけじゃない。一刻も早く赤ちゃんを産んで、外の空気を吸わせてあげたい。

「リカさん、赤ちゃんの頭が見えました。次に大きな痛みを感じたら、思い切りいきんでください」

夫の付き添いがなく、一人で分娩台に乗った時は不安でいっぱいだった。でも今は、赤ちゃんと一つになって二人三脚で頑張っている感じがする。

「赤ちゃんのために出口を少しだけ切開します。綺麗に切って縫いますから、裂けるよりはマシです」

「赤ちゃんのためなら…なんでもお任せします…」

あそこを切って縫うなんて、絶対に避けたいと思っていた。

それなのに、この時は自分のことなんてどうでもよくて、とにかく赤ちゃんが健康に産まれてくれることだけを願っていた。


― こんな姿、マサルにみせられないや…、

マサルが立ち会わないでくれて心底良かったと思った。私はやっぱりこんな姿をマサルにさらけ出すことはできないし、彼も受け入れることはできないはず。

でもこの世には、壮絶な出産を一緒に乗り越え、共に感動を分かち合える夫婦たちが山程いることを思うと、少し羨ましくなってしまう。

「あと少し、頑張れ…!」

私は無意識に、声を出して赤ちゃんを応援していた。

これまで自分のことが一番大切だと思って生きてきたけれど、今はもう自分よりも圧倒的に大切な存在がいることを全身で実感している。

歯を食いしばり、顔をしかめながら、腹の底から獣のようなうめき声を出していきみ続けた。

最後の力を振り絞った瞬間…。

どゅるんと何かが滑り落ち、全身が脱力した。

「ほぎゃ〜、ほぎゃ〜、ほんぎゃ〜」

赤ちゃんの産声が聞こえ、ようやく自分が出産を終えたのだと認識した。

「可愛い」と思う余裕などなく、「無事に産まれてくれてよかった」と安堵の気持ちに浸りきる。妊娠中、辛かったことが、全て報われたような気がした。

「可愛い女の子ですね!リカさんはミルクの予定なんですよね。でも、初乳はあげてみますか?赤ちゃんを守ってくれる免疫物質が含まれているんですよ」

産まれたての赤ちゃんを胸の上に置かれ、両手で包んだ。


泣き声も、皮ふも、表情も、全てがほわほわと柔らかく、尊かった。

小さな命の温もりを実感すると、急に涙がボロボロこぼれ落ちた。

経験者であるアサミやマコ、それから夫も、母乳をあげると胸が萎むので薬で止めてミルクで育てることを勧めてきた。

しかし、いざ赤ちゃんを目の前にすると、自分の胸のことよりも、赤ちゃんのことを一番に考えたくなってしまう。

「薬で母乳を止めるなんてバカみたい…。私…、誰に何を言われようと、あなたを最優先に生きるって誓うね」

その瞬間、視界が真っ白になり、意識がふわっと遠のいた。


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リカは無事?マサルは一体どこ?

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