23区のオンナたち Vol.4

「大手勤務で年収1,000万の人と結婚したかったけれど…」丸の内OL26歳に起きた、ある変化

— 涼真:今日、何時頃来るの?


12:00。

昼休みにお弁当箱を広げながら携帯を見ると、涼真からLINEが入っていた。

涼真は同じく丸の内勤務。大手不動産関連会社に勤める、3歳年上でイケメンの彼氏だ。

出会いはまさかの新丸ビルでのナンパだったけれど、かれこれもう2年も続いている。

「そろそろ、外にもご飯を食べに行きたいなぁ」

ここ1年、デートはほぼ涼真の家だ。

乃木坂にある彼の家のほうが、私の四谷にある家より広いので、居心地はいい。でも行くと必ず私が食事を作り、掃除なども全部私がしていることに、最近少し不満があった。

「茉莉花みたいな女の子が、理想だったんだよね」

彼はそう言ってくれていたし、最初は嬉しかった。半同棲のような気分だったし、結婚をちゃんと考えてくれているのだと思っていたから。

ただ最近、2年経っても結婚に対して何もアクションを起こさない彼の態度に苛立つ自分もいる。

「やばい。昼休みが終わっちゃう」

1時間のランチタイムはあっという間だ。コーヒーを買うために、慌てて丸の内仲通りに面するカフェに走った。


「な〜んだかなぁ。ヤル気が出ないなぁ」

今の会社に就職が決まった時、心から嬉しかった。新卒から今まで、丸の内で働いていることが私のプライドでもあった(ただのOLじゃなくて、#丸の内OL ということが)。

アフターファイブは充実していたし、彼氏ができる前は、金曜に同期たちと出会いの宝庫であるこの界隈で飲むのは最高の時間だった。

でもこの1年半の間に、街は変わった。

激混みだったカフェが、並べばすぐにコーヒーが買えるようになったのは嬉しい。でも私はスーツをびしっと着こなした男性や、上品で綺麗な女性たちで彩られていた丸の内が好きだったのに、最近そんな人たちはめっきり減ってしまったのだ。

その代わり、綺麗なママたちがテラス席でランチをしている姿をよく見かけるようになった。そんな裕福そうな主婦たちの姿を見ると、いつか私もあちら側に…と心が躍りつつも、本当に結婚できるのか不安にもなる。

「あぁ、ツマラナイ!早く結婚したい!」

そう、空に向かって叫んでいた。

17:30。大手町駅から千代田線に乗る。ピンヒールを履いてきた自分を恨みながら乃木坂駅で降りて買い物を済まし、彼の部屋の扉を開けた。

「今日の晩御飯、なに?」

リモートワークを終え、ゲームをしていた涼真は一瞬振り返っただけで、すぐにテレビ画面に視線を戻してしまった。

一昨日掃除をして出て行ったはずなのに、彼の部屋はすでにもう散らかっている。

「あのさ…」

言いたいことは、山ほどある。でも私たちは婚約をしているわけでもない。結婚をしているわけでもない。

だから喧嘩をしたら別れを言い渡されそうで、怖くて何も言えない。

そんな私の心の声が漏れていたのだろうか。急に涼真がゲームの手を止め、振り向いた。

「あ、そういえば、来週は俺出社するから、帰りに外でご飯でも食べる?久しぶりに丸の内で」
「う、うん!! 久しぶりのデートだ!嬉しい!!」

以前は仕事帰りに落ち合って、丸の内デートをしていた。でもお互いリモートワークになって、その機会がなくなってしまっていた。

今年の6月で、私は27歳になる。結婚するなら、彼のようなイケメンで身長が高くて、大手企業勤め(年収1,000万レベル)の人がいい。

彼は結婚相手として最高だし、どうしても離したくない。そう思い、しがみついていた。

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