男女の賞味期限 Vol.2

夫以外の男の視線にドキドキする。行儀の良い妻が、「女」に変わる時

複雑な女心


-それは、あのクリームパンみたいな旦那ならね。

ケタケタと笑う彼女を前に、真希は心の中で毒づく。

2杯目のシャンパンで饒舌になったのか、気付けば真希はこんな質問をしていた。

「ねえでも。男として意識出来ないのに、そういうこと出来る?」


「やだー、昼から激しいテーマ!

でも私も気になってた。いつまでも男女でいるなんて無理でしょ?」

梨香は、興味津々といった様子だ。恋愛体質の彼女は、30才過ぎた今でも短命な恋愛を繰り返している。

梨香いわく、刺激がないと生きていけないらしい。とにかく飽きっぽくて、恋人だけでなく、仕事も住む場所もコロコロ変わるのだ。

すると華子が、「真希は相変わらずね。今日の格好しかり」と、冷やかすように笑って続けた。

「妊活目的以外では…、ほとんどないわよ。でもね、旦那のことは好きだから」

お腹を愛おしそうに見つめる華子は、幸せオーラに包まれている。その様子から夫婦関係は良好なのだろうと悟る。だが真希は納得がいかない。

「なんだろう、ムードとかはないの?そんな機械的なのはちょっと…」

すると梨香が、勢いよく割り込んできた。

「その反応からすると、真希は翔一さんとまだまだラブラブってことでしょ?羨ましいわあ。

女として求められる秘訣、教えてよ!」

「たしかに。色気の無い格好の私とは大違い。やっぱり、バッチリ女でいると、旦那さんも女として見てくれるのかあ」

梨香の言葉に、華子も頷く。だが真希は、盛り上がる2人の隣で複雑な気分だった。

翔一には、昨晩も断られたばかり。朝だって、今晩も勘弁してくれと遠回しに釘を刺された。

女として求められているとは言い難い。いやむしろ、拒否されている。だがここで、翔一とのギクシャクした関係を晒すのはプライドが許さなかった。

「ま、まあ」

適当な愛想笑いを浮かべてかわすと、梨香が再び爆弾を投入してきた。

「私は、一生女として見られていたいなあ。理想は、うーん。ほら、政府高官の夫を持ちながら若き青年将校と恋に落ちる、アンナ・カレーニナみたいな?」

梨香の夢物語に、華子がプッと吹き出す。

「小説と現実は違うでしょう。夫を失うリスクを冒してまでなんて、バカバカしいわよ」

2人が盛り上がっている隣で、真希は居心地の悪さを感じていた。下手に話を振られないように、「私には関係ない話だから」と笑ってごまかす。

同じ既婚者とはいえ、華子ほど合理的に割り切ることは出来ない。夫には、ずっと女として見て欲しいし、求められたいと願っている。

だがここで、梨香に共感しようものなら、夫婦生活が停滞気味、欲求不満だということをうっかり晒してしまいそうだ。それは、避けたい。

-早く終われば良いのに。

久しぶりの楽しいランチのはずが、ひどく息苦しい時間に感じられた。



夜。

ソファに寝転んだ真希は、大きなため息をついた。

他の男からの熱い視線で一時的に自信を取り戻したものの、根本的な解決につながっていないことくらい分かっている。翔一との停滞した関係をどうにかしなければ、モヤモヤした気持ちは解消されない。

昨晩の言葉といい、翔一も、華子のような考えにシフトしているのは間違いない。だが、そんな無機質な夫婦関係になってしまうのは御免だ。どうにかもう一度、男女に戻る方法を考えなければ。

-ちょっと環境を変えてみるっていうのはアリかも。

寝る準備を終えた真希は、翔一の帰りを待った。

23時。

玄関が開く音がしたので、急いで出迎える。すると翔一は、少し怯えたような表情を見せた。

「あ、起きてたの。先に寝てて良かったのに…」

真希は、目を逸らしてその場を逃げようとする彼の腕を掴んでこう言った。

「最近ちょっと疲れてるでしょ?羽を伸ばしに、近場のホテルでも出かけようよ」


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