男女の賞味期限 Vol.2

夫以外の男の視線にドキドキする。行儀の良い妻が、「女」に変わる時

友人の夫婦生活事情


翌日。

真希は、高校時代の友人・華子と梨香とのランチに出かけていた。

「久しぶり!って、真希。随分気合い入ってない?」

先に座っておしゃべりに興じていた2人だが、真希が登場するなりポカンとした表情を見せた。

「そ、そう?久しぶりの外出だったから」

何食わぬ顔で答えるが、正直バツが悪い。開口一番に鋭く切り込んでくるなんて、さすがは10年以上の仲だ。親友の目は侮れない。

ボディラインを強調した黒いノースリーブのワンピースは、真希の勝負服だったことを2人は覚えていたのだろう。

ジロジロと見られて気恥ずかしさを覚えた真希は、慌ててカーディガンを羽織る。

まさか、この女子会のために気合いを入れてきたわけではない。昨晩、翔一に傷つけられた自尊心を回復するためだった。

自分がお洒落して出かければ、世の男性は振り返る。女としてまだまだいけるということを証明したくて、独身時代と同じくらい着飾ってきたのだ。

結果は予想通り。レストランに来る途中、数人の男性から向けられる不躾な視線はこの上なく快感で、ピンヒールを鳴らしながら気分良く闊歩してきたところだ。


「実は、妊娠4ヶ月なの」

乾杯に何を飲むかと騒いでいると、華子がお腹を撫でながら報告してきた。

「おめでとう!きゃあ、ベビーシャワーしたい。楽しみ!」

キャッキャとはしゃぐ梨香の横で、真希はかなりの衝撃を受けていた。

華子が結婚したのは、1年前。

独身時代から「恋愛と結婚は別」と豪語していた彼女は、結婚相談所に登録、あれよあれよという間に結婚した。

夫は、大手不動産勤務の7歳上。一度会ったことがあるが、あまりのダサさにギョッとしたのを覚えている。

小太りでニコニコした、えびす顔の男。その日彼がクリーム色のトレーナーに身を包んでいたこともあり、真希の中では、華子の夫=クリームパンとインプットされている。

人様の旦那に対して失礼だが、男としての魅力は1ミリたりとも感じられなかった、あの男と。下世話だと思いつつも、華子たちの夫婦事情が気になってはいたのだ。

そんな彼女が妊娠ということは。当然、そういう関係があったということ。

すると華子が、デカフェのコーヒーを飲みながら淡々と話し始めた。

「職場復帰を考えると、夏か秋に産みたくて。タイミング見てもらって、うまくいったのよ」

「職場復帰?」

独身謳歌中の梨香が、はて?という表情で首を傾げる。

「保育園よ。4月って、入園枠が一番多いでしょ?半年くらい育休を取って復帰したいって考えて計算したの」

「さすが華子ね。計算通りってわけ?」

梨香が感心したようにため息をつく。だが真希が気になったのは、「タイミングをみてもらう」というセリフの方だった。

「タイミングって、病院のこと?」

さりげなく聞いてみると、華子は「あっ」と小さく呟いた後、やたら詳しく説明を始めた。真希も妊活中で情報収集していると思ったらしい。

「そうそう。私は妊娠しやすい時期を特定してもらうために病院で診てもらってたんだよね。いわゆるタイミング法ってやつ。

それで授からなければ治療にステップアップも考えてたの。テキパキした女医さんでおすすめだよ」

紹介しようか?とでも言い出しそうな勢いを止めるべく、真希は制止する。

「私はまだ、そこまでは考えてないんだけど…。もう少し、カップルでいたいかなって」

すると華子は、少し身を乗り出して聞いてきた。

「え?夫婦が男女なんてあり得ない。

私、旦那のこと、男として意識したことなんかないよ」

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