コロナ禍、男と女の出会いは減った。
出会いがなければ、結婚も恋愛も始まらない。
時間はお構いなしに進んでいき、女たちは焦るばかり。
―長谷川七瀬(30歳/独身/彼氏ナシ)
「来年には絶対結婚する!」
そう宣言した女が企てたのは、ニューノーマル時代の新しい婚活のカタチ。
必要なものは「過去の男たちの記憶」、以上。
2020年5月20日:初めての緊急事態宣言下の「#STAY HOME」
ーあと、30秒。
七瀬はオーガニックコットンのルームウェアに身を包み、おもむろに窓を開けてベランダに出た。
涼しい風が、乾かしたばかりの髪を揺らす。
近くに見える東京タワーは、青い光を放っている。
ー3、2、1…
「ハッピーバースデー、なんてね」
ベランダで頬杖をつきながら、七瀬はぽつりと呟いた。
スマホに映る時計がご丁寧に、5月20日の0時を迎えたことを教えてくれる。
ーまさかこの私が、30歳の誕生日を、ひとりぼっちで迎えるなんて。
そう、世の中は緊急事態宣言真っただ中。街はゴーストタウン化している。
七瀬の勤める映画配給会社も例に漏れず原則テレワークに切り替わった。
スーパーへの買い出し以外はほぼ家から出ない自粛生活が始まって、はや1か月半。
AmazonプライムやNetflixのドラマや映画はほぼ見尽くした。
代わり映えのしない毎日は、まるで監獄生活をしているかのよう。
「最後に直接人と会って食事したのって、いつが最後かしら…?」
この記事へのコメント
元カレが経営者と知ってとか起業したのをインスタでみてDM