
柄本佑が「こんな気持ちのまま、家には帰れない」と思った時の、至高の夜の過ごし方とは
「普段はひとりでもくもくと、東海林さだおさんの本とか読みながら飲んでいます。よく行く近所の居酒屋なんて、週3で通っているのに店主と話すのに1年かかりましたから(笑)。
店主と話すようになって、いつも居合わせる常連さんが店主のサーフィン仲間だったことがわかったり。店の関係図が、1年がかりでやっと把握できたくらいです(笑)。
今日のお店は、大将がとても気さくな方だったので、つい話したくなっちゃいました」
「いいものを体験した後は、いい酒が飲みたくなる」
柄本さんには、どんな相手であっても心を緩ませてしまうような、不思議な柔らかさがある。
この自然体な空気感は、彼の演じる役にも共通しているように感じる。
2020年は3本の映画と、2本のドラマに出演と大忙し。なかでもドラマ『知らなくていいコト』では、包容力たっぷりにヒロインを受け止める元カレ役を演じ、SNSで「かっこいい」「色気がある」と一躍話題に。
そんな〝時の人〞が、ひとりの男に戻って酒に浸りたくなるのは、どんな時なのだろうか。
「いいものを観たあとは、どこかに寄りたくなりますね。こんな豊かな気持ちのまま家に帰って、日常には戻れない。夢心地というか、少しでも長くその余韻に浸りたくなるんです。
下北沢でレイトショーを観たあととか、行きつけの店に寄ることが多いですね。お酒を飲みながら『いい作品だったなぁ』と振り返りつつ、一杯やるのが最高ですね」
柄本さんにとってのひとり飲みは、緩やかに気持ちを切り替えるクールダウンの役割なのだろうか。
「ひとり飲み」からは少し話がずれるが、こんな風にお酒と付き合うようになったのは、父親とのこんなエピソードがあったからだという。
「いいものを観た後は、いいものを食べたい、いい酒を飲みたい、というのは、父の考えなんです。
昔、オペラを観劇した帰りに、『最高だったな』となって『今日は鮨だな』とひと言。そのときに食べた鮨がまた美味しくて。こういうときの店選びって、大事ですよね」
「奥田瑛二のひとり飲みは最高に格好いい。あれが俺の、理想です」
最近、ヘアサロンに行くと『東京カレンダー』を置かれるようになったという柄本さん。それを見て、「大人の入口に立ったな〜」と思ったそうだが、彼が描く〝大人の男のひとり飲み〞とは?
「それこそ、お義父さんの奥田瑛二がひとり飲みをしていそうな(笑)、オーセンティックなバーとか憧れますね。
以前、僕がウイスキーが飲めないって話したら、『じゃあ行くか』となり、奥田さんがバーに連れていってくれたんです。
そこが暗〜い照明で、暗闇からスッと丸い氷の入ったロックグラスが出てきて、ちびちびと飲みながら、たまに小声のマスターと奥田さんが言葉を交わすんです。
それがイメージ通りで、最高に格好良くて。『俺にはこれは無理だな……』と(笑)。
でも、そういうお店に行くことによって、自分のステップが上がるような気分になりますよね。お酒を嗜むって、男のそういう内面も成長させてくれる」
本人は謙遜するが、実の父親しかり義理の父親しかり、格好いい大人の男に囲まれているからなのか、すでに〝大人なバー〞にしっくりと馴染む色香が、柄本さんから滲み出ている。
こんな男性がバーでウイスキーグラスをくゆらせていたら、うっとり見惚れてしまうに違いない。
2021年は2本の映画公開を控え、ドラマ『天国と地獄〜サイコな2人〜』に出演する柄本さん。
最後に、仕事への思いを語ってもらった。
「映画作りをする現場のひとりでいたい、というのがこの仕事を選んだ最初の入口。それは基本的に今も変わりません。
いろんな仕事があるけど、今後は映画監督もやってみたいし、やっぱり映画は特別ですからね。14才で映画の現場を体験してから、ものづくりに取り憑かれて今があります。
大人になった今もこうして続けられている。何か取り憑かれるほどのものに出合えた僕は、本当に幸せ者なんだと思います」
あくまで自然体でゆるりとインタビューに答えていた彼が、映画作りの話になると、少しだけ語気が強くなった。その静かな熱量に、柄本 佑の役者としての魅力がすべて表れている気がした。
最後に、柄本さんはこう付け足した。
「そういえば仕事終わりもそう。取り憑かれるほどに夢中になった後だから、仕事終わりは必ず酒を飲んで、少しずつ現実の世界に戻ります(笑)」
彼が仕事終わりに酒を飲むとき、その魅力的に違いない佇まいを、心から見てみたいと思った。
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▶前半はこちら:柄本 佑を、恵比寿で話題の居酒屋に連れて行ったら、色気溢れる飲みっぷりを見せてくれた!
■プロフィール
柄本 佑 1986年12月16日生まれ、東京都出身。2003年、映画『美しい夏キリシマ』で主演デビュー。独特の存在感を放ち、本格派の若手俳優として注目される。2021年2月20日に、主演作『痛くない死に方』が公開。
■衣装
コート 284,000円、ニット 115,000円〈ともにメゾン マルジェラ/メゾン マルジェラ トウキョウ TEL:03-5725-2414〉、ストール〈スタイリスト私物〉
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