忘れられない“あの日” Vol.2

合鍵を使って、1ヶ月ぶりに彼女の部屋を訪れたら…。男が見てしまった衝撃のモノとは



「何も、いらない」

クリスマスが近づく度に幼い頃から、何度も言い続けてきた言葉。

「信二。クリスマスなのよ。本当に何もいらないの?」

信じられない、とでも言うように両親は尋ねてきたが、その頃の僕はすっかり理解していた。

…言ったところで、意味がないってことを。


覚えているのは、5歳のクリスマス。

僕はどうしても、どうしても、ヒーローものの変身ベルトが欲しかった。

それなのに…


サンタクロースがくれたのは、父親が子供の頃に愛用していたという、古ぼけた外国製の積み木だった。

それからも毎年、クリスマスプレゼントは父親のお古ばっかりだった。ヴィンテージティントイのミニカーに、希少な童話集や図鑑。どれも良いものばかりだった。

でも、そんなことが続くうちに…本当に欲しいものを伝えられなくなった。


仕事でたくさん稼いでいても、物欲がない。

そんな話の延長で、出会ったばかりのユカに、何気なくこぼした身の上話。

でも、彼女は僕の目をじっと見つめながら、こう言った。


「分かるわ。私も、なかなか言えないの。自分の心に素直に従うのって、けっこう難しいのよね」

そう言っていたずらっぽく笑うユカを見て、僕は自分でも驚くほど激しい気持ちを抱いた。

ー君が、欲しい。

大人になった僕が、やっと心から欲しいと思えたもの。

それが…ユカだった。


今日はクリスマス。

かなり待たせてしまったけど、彼女がいつか「憧れる」と言っていた指輪をきちんと準備してきた。

ケンカして以来、会えずにいたけれど…。

突然部屋に現れた僕が、この指輪を渡したときの彼女の顔を想像するとくすぐったいような気持ちになる。

この記事へのコメント

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No Name
切ないか?1ヶ月も音信不通だったのに突然来るとか怖すぎ。
2020/12/24 07:1999+返信2件
No Name
彼に合鍵渡してるのに
他の男とイブにいいことするなら
ドアにチェーンはかけておいた方がいいよ
2020/12/24 06:5899+返信2件
No Name
切ないなぁ…

喧嘩の後の自己陶酔ぶりには引いたけど。
2020/12/24 05:1299+返信2件
No Name
ユカにはもう新しい彼氏がいたのか(二股かけられてたのかもしれないけど)
一人称の語りが切なさを引き立てますね
2020/12/24 05:2686
No Name
クリスマスにお古の積み木はひどいよなぁ。
2020/12/24 06:3851返信2件
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