SPECIAL TALK Vol.74

~この体だからこそできることをやりたい。逆境を覆しつづけてきた自信が、次なる挑戦に繋がる~

遠いプロへの道を眺めながら堅実に努力を続ける

金丸:でもどこかの時点では、プロになるという考えが頭にちらついたわけでしょう?

赤星:そうですね。最初のきっかけは、高校3年生のときに春の甲子園(センバツ)に出場したことです。

金丸:そんなに強くないと思って入学したのに、甲子園に行くまで強くなったんですか。

赤星:やっぱり先輩たちのレベルが違っていたんです。最初に甲子園に出場したのは2年生のときなので、1つ上の先輩たちのおかげです。エースで4番、球速は148キロという人もいるし、足は速いわ打つわ。そんな人たちに囲まれて、レギュラーになるのがやっとでした。でも3年生で出場したときは、出場選手中、打率が2位で盗塁数もダントツトップだったので、注目選手として雑誌に載ることもできて。

金丸:その頃からすでに、走力がウリになっていたんですね。

赤星:はい。実は甲子園に出るまで、盗塁してアウトになったことはありませんでした。

金丸:それはすごい。

赤星:逆に、甲子園ではアウトになったという最悪の結末ですけど(笑)。甲子園でもやはり、上には上がいることを思い知りました。

金丸:でも雑誌に名前が載ると、それまでとは意識が変わったのではないですか?

赤星:ドラフト前に、ドラフト候補のCランクとして僕の名前が出ていて、「プロにも注目されてるんだ」とは思いました。でも、まだ現実的ではありませんでしたね。本格的にプロになりたいと思ったのは、亜細亜大学に進学してからです。

金丸:大学野球の名門ですね。

赤星:練習はハードで、上下関係もはっきりしている厳しい環境ですが、プロに進むような選手がいるチームだったので、「ここでレギュラーになって活躍できれば、いいアピールになる」と。亜細亜大学は今も東都大学野球連盟というレベルの高いリーグに所属していますが、僕は4年間での盗塁記録が48個と、リーグ3位の記録を作りました。

金丸:では実績ができて、狙いどおりアピール材料になったと。

赤星:ちなみに、リーグ最多記録は52個。最後のシーズンで5つ盗塁すれば最多記録が作れたのに、それまで1本もホームラン打ったことなかった僕が、なんと3試合連続でホームランを打ってしまって。しかもリーグタイ記録という。

金丸:ホームランじゃ盗塁できないですからね(笑)。

赤星:結局、盗塁も連続ホームランも中途半端に終わってしまいましたが、ドラフトのランク付けは、Bランクに上がりました。だから、もしかしたらいけるんじゃないかと、正直4年生のときはドラフト待ちをしました。でもお声はかからず、やっぱり無理なんだなと。

金丸:残念ですね。

赤星:スカウトの方からは「体が小さいから、体力的にきついだろう。もうワンランク上の社会人野球で経験を積んでからでもいいんじゃないか」と言われました。でも僕としては、野球がダメだったときのこともちゃんと考えておきたかった。

金丸:準備するタイプですからね。

赤星:なので、大学時代に教員免許を取ったし、就職先も実業団の強さではなく、安定性を重視しました。11社に誘われましたが、絶対に潰れない企業に行こうと思い、JR東日本に。当時のJR東日本は、都市対抗野球大会に9年間出場していなくて、誘われたなかでは一番弱かったんですけどね。

金丸:赤星さんは闘志あふれるプレーが持ち味なのに、堅実にやるところはとことん堅実に、というのが面白いですね。実業団チームに入ってみて、どうでしたか?

赤星:それが、いきなり意外な展開があって。僕が入社したのはシドニーオリンピックを2年後に控えた、アジア予選がある年でした。それまで代表選手なんて声がかかったこともなかったのに、強化指定選手に選ばれました。

金丸:ついにチャンスが巡ってきたんですね。

赤星:代表を勝ち取るために参加した大会で、大事なところで盗塁を3つ決めて、日本代表にも。

金丸:代表ともなると、やはりプロの注目度も変わるでしょう。

赤星:阪神のスカウトも来てくれるようになりましたね。しかもオリンピックから帰ってきたら、阪神のほかにパ・リーグから3球団オファーが来たんですよ。

金丸:では他球団に入団する可能性もあったんですね。一阪神ファンとしては、赤星さんが阪神に来てくれて本当によかった。

赤星:僕が大好きな中日からは、一切来なかったんですが(笑)。だったらセ・リーグでプレーしたいし、阪神にしようと決めました。

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