振り返れば、そこにいる Vol.2

片思い中の男の後を、こっそり追ってみたら…?女が見てしまったショックな光景

メールを最後までスクロールすると署名欄があり、そこにきっちりと電話番号が書かれていたのだ。

―これって、佐伯さんの電話番号だよね…?

メールの内容こそ冷たかったが、これで直接彼と話せる。そう思うと仁美は「迷惑かもしれない」と頭の片隅で思いつつも、すぐに社用スマホから電話をかけてしまった。

「はい、佐伯です」

コール音が何度か鳴ったあと、あの夜と同じ優しい声で、佐伯が電話に出た。

「あっ、あの佐伯さん…?夏川ですけど」

「え、ナツカワさん?」

佐伯は突然かかってきた電話の相手が、誰だか分かっていない様子で尋ねてきた。

「仁美です。あの、大阪の…!」

もはや自分のことなんて覚えていないのかもしれない、という不安に胸が苦しくなりながらも、仁美は恐る恐る自分の名を告げる。

「あぁ、仁美ちゃん」

佐伯のちょっと面倒くさそうな「あぁ」という返事はショックだったが「仁美ちゃん」と名前を呼んでくれたことに胸が高鳴った。

「あの、迷惑かなって思ったんですけど…。メール、全然返してくれなかったから。次は、いつ大阪に来るんですか?」

「来月の研修かな。ああ仁美ちゃん、ごめんね。今仕事が立て込んでるから」

そう言って佐伯から、プツっと電話を切られてしまった。

―やっぱり、冷たいな。

予想はしていたが、彼の冷たい態度に肩を落とす。

だがほんの少しの期待を込めて、来月のスケジュール帳の研修日のところに、小さなハートマークを書き込んだ。

しかしそれからというもの、佐伯は何度電話をかけても出てくれなくなってしまった。

―やっぱりダメだ。いつかけても繋がらないよ。

あんなに幸せな夜だったのに、やっぱりもうダメかもしれない。あとはプライベート用のスマホで電話をかけるくらいしか、佐伯と連絡を取る手段はなかった。

「これでダメだったら諦めよう…」

仁美はそう心に決めると、彼に電話をかけ始めたのだった。


「はい、佐伯です」

やはり佐伯は、ワンコールで出た。「やっぱり避けられてたんだ…」と仁美は心の中で思いながらも、それを隠すために必死で明るい声を出そうとする。

「もしもし、仁美です!」

「あ、仁美ちゃんか。いつも電話かかってくるのが会議中で、なかなか出られなくてごめんね」

久しぶりに聞いた佐伯の優しい声に、仁美は感動すら覚える。

「あっ、あの…」

あんなに話したかったはずの佐伯とせっかく電話をしているのに、いざとなると言葉が出てこない。

「どうしたの?」

今日の佐伯は、どこまでも優しい。それが余計に、仁美を不安な気持ちにさせた。

「つ、次に佐伯さんが大阪に来るとき、またご飯に行けたらなって、思ってて…」

自分はこんなに話すのが苦手だっただろうか。そう錯覚するほどに、仁美はモゴモゴと話してしまう。

「うん、いいよ。またみんなで行こう」

―みんなで、か。やっぱりもう、私には興味がないんだ。でも佐伯さんと会えるだけ、我慢しよう。

佐伯の言葉に、一瞬だけ絶望した仁美だったが「また彼と会えるんだから」と、無理やりポジティブな考えに思考を切り替える。

そして、待ちに待った研修当日。仁美の身に、予想もしていなかった出来事が起きたのだ。

この記事へのコメント

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No Name
返信来ないうちに更にメール連打とか、何度も電話とか、やればやるほど逃げられるのに。
『あと一度でもいいから』‥‥って絶対そんなわけないでしょ笑
2020/12/01 05:2799+
No Name
仁美、それストーカーや…
2020/12/01 05:1699+返信3件
No Name
佐伯やっぱり既婚者かあ
軽い遊びのつもりだったんだろうけど
ここから転落していくんだろうなw
2020/12/01 05:1499+返信4件
No Name
社内で火遊びは危険しかないぜ。
2020/12/01 05:2759
No Name
佐伯も悪そうだけど、何より仁美の頭の悪さ。今でもこんなニャンニャンOLがいるのかと思うと、朝から不愉快。
仕事しろよってかんじ。
2020/12/01 07:2053返信1件
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