5.2%―。それは、日本国内で“妻の方が稼ぐ”世帯の割合。
「妻には、仕事を頑張ってもっと輝いてほしい」
笑顔でそう言いながら腹の底では妻を格下に見て、本人も自覚せぬまま「俺の方が稼いでいる」というプライドを捨てきれない男は少なくない。
そんな男が、気づかぬうちに“5.2%側 ” になっていたら…?
男のプライドが脅かされ、自らの存在意義を探し始めたとき、夫はどんな決断をするのだろうか。
「ねえ伊織、相談があるんだけど…。あ、そうだった」
伊織に相談しようと呼びかけた新太(あらた)は、途中で止めた。彼女は昨日、仕事に集中したいと言って出て行ってから、まだ帰宅していない。
時刻は20時。今夜はどうするつもりなのだろうか。
振り返れば、伊織はこの1ヶ月もの間「副業の方が忙しいから」と、ホテルに泊まってばかりいる。
副業を始めた当初は、仕事をがんばりたいという彼女の意向を汲んでいたが、最近はさすがに度を越えている気がするのだ。
…そもそも、伊織がここまでして副業に力を入れる必要などない。なぜなら夫である自分の収入だけで、十分に贅沢な暮らしを送れるだけの余裕があるのだから。
新太が「ハァ…」と、何度目か分からないため息をついたとき、握りしめていたスマホがブルルと震えた。
慌てて画面を見ると、伊織からのメッセージだった。待ちわびていた妻からの連絡に、新太は急いでLINEのアプリを立ち上げる。
『今日も仕事が終わらないので、ホテルに泊まります。本当にごめんなさい』
―えっ。2日連続で帰宅しないのかよ…。そんなに副業が忙しいのか?
もしかしたら、副業以外の別の用事があるのかもしれない。新太は、伊織からのメッセージにイヤな想像を膨らませる。
その時新太は、あることを思いつき慌ててパソコンを開き始めた。
この記事へのコメント
専門学校卒とかならそりゃすごいけど、そこそこの大卒だとしなら二馬力でアラサーで1500万は普通もいいとこで夫が自慢するほどの額ではない。