溺れる男~理性と本能のあいだで~ Vol.1

溺れる男~理性と本能のあいだで~:婚約者が寝ている隣の部屋で…。理性的な男が犯した”最低の過ち”とは

―理性と本能―

どちらが信頼に値するのだろうか
理性に従いすぎるとつまらない、本能に振り回されれば破綻する…

順風満帆な人生を器用に歩んできた1人の男が対象的な2人の女性の間で揺れ動く

男が抱える複雑な感情や様々な葛藤に答えは出るのだろうか……


「婚約おめでとう!!」

シャンパンが勢い良く弾け、先日仕立てたばかりのスーツにドンペリが染み込んだ。

西麻布の会員制バー、騒がしい友人たち、テーブル一杯に並べられたアルコール。

見慣れた光景が目の前に広がっているが、大学時代から幾度となく繰り返してきた夜とは明白な違いがある。

今宵、僕の隣には、婚約者の可奈子が座っているのだ。

一度も太陽に当たったことがないような白い肌に、一度も染めたことがないであろう漆黒の黒髪。そのコントラストの強さが、夜の西麻布で異質な空気を放ち、異様に輝いて見えた。

「可奈子さんみたいな清楚な女性は、こんな場所に足を踏み入れたことないでしょう」

僕の友人たちは並々と注がれたドンペリを一気に飲み干すと、神聖な生き物を見るかの如く物珍しそうに可奈子を凝視した。

「…西麻布は、幼稚園の頃に通っていました。それ以来です。誠一さんが親友たちと飲むと聞いて、是非ご挨拶をしたく…無理言って連れてきてもらったんです。どうぞよろしくお願いいたします」

可奈子は上品に微笑むと、純白のハンカチを手に、僕のスーツに染み込んだシャンパンを甲斐甲斐しく拭き始めた。

「誠一さんったら…」

可奈子は眉尻を下げて呆れたような笑みを浮かべると「そんなところも愛しているわ」とでも言うような熱の籠った目で、愛おしそうにこちらを見つめてきた。

僕も、可奈子のことは愛している。

だが、彼女に対して恋愛感情を持ったことは一度もない。

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