彼女のウラ世界 Vol.14

「勝手にどうぞ、お幸せに」元カノの婚約報告に、男が嫉妬心を剥き出しにしたワケ

『doremo_watashi』

―どれも、わたし?

その瞬間、明子に言われた言葉が脳裏をかすめた。

「“どれも私”だから。ウラの姿でも何でもないのよ」

これは、自分にとって都合のいい一面しか見ようとしなかった元カレへのメッセージなのだということに、敏郎はようやく気付いた。

このアカウントが開設されたのは、敏郎と付き合い始めて間もない頃だ。

敏郎の投稿に“いいね”がつけられていたのも、自分のことを知って欲しいとアピールするためだったりしたのだろうか。

「あなたは自分の望むもの以外、何も見えていなかったんだと思うの」

敏郎は、明子の言葉をさらにかみしめた。

そんな彼女は、もう敏郎が手の届かない世界へ行ってしまった。敏郎が近づきたくても近づけなかった、はるか遠い上の世界へ。


「ではお時間なので、失礼させて頂きます」

シッターさんが帰宅するやいなや、久楽々が部屋に入ってきた。

「パパー、今日のご飯なあに?」

「どうしようか。考えるのも大変なんだよなあ」

「じゃあくらら、ハンバーグがいい!ポテトサラダもつけてね」

屈託のない顔で久楽々が笑った。

「そうしようか。ハンバーグはお肉屋さんのを焼いてあげるけど、ポテサラは大変だからアールエフワンの野菜がいっぱい入ったヤツにしような」

「えー。パパのがいい」

「いいだろう。そっちの方がおいしいんだから」

不満げに口を膨らませる彼女の頬を、敏郎はツンツンとつついた。部屋の中に2人の笑い声が響く。

―優里菜が忙しいぶん、家事もこなれたもんだ。料理だけなら一通りできるし、主夫のような生活も悪くない。

敏郎は、自分にこんな一面があったのかと驚いている。

―それに気付かせてくれたのは、紛れもなく優里菜と、明子のおかげだ。君の存在は、女性に対する見方を大きく変えてくれた。

そして今日も敏郎は久楽々を寝かしつけ、深夜まで働く優里菜の帰りをジッと待っている。

「僕はまだ終わってはいない」そんな炎を胸に秘め、再び明子のいる世界に近づくことを願いながら…。


Fin.


▶前回:「温情で結婚を申し込んでやっただけ」勘違い男のプロポーズに、元恋人が見せた反応は

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