夏の恋 Vol.2

「自粛生活が明け、本当に愛している女が誰か気づいた…」女性を傷つけた男が、受けた報いとは

今年も、夏がやってきた。

青い空、燦々と降り注ぐ太陽。そしてバケーションへの期待。夏はいつだって、人々の心を開放的にさせるのだ。

そんな季節だからこそ、あなたは“夏の恋”を経験したことはないだろうかー?

東京カレンダーのライター陣が1話読み切りでお届けする、サマー・ラブストーリー。

先週紹介したのは、東京オリンピックに行く約束をしていた男女の、7年越しの恋の行方。さて、今週は…。


去年末まであれほど頻繁だった、中東への海外出張が消滅して久しい。

春には週5日だった在宅勤務は週3日程に減ったものの、あの多忙な日々は、今の毎日と比べてみれば別世界の出来事だったかのようだ。

商社の電力事業担当として、かつては出張に追われ、忙殺されていたというのに。

―やっと体力も戻ってきたかな…。

19時半の駒沢公園。ジョギングコースが駒沢通りに差し掛かるあたりで、後藤幸成(ゆきなり)はナイトランの足を止めた。

自粛生活ですっかり体が鈍ってしまって以来、在宅勤務の日のランはすっかり日課になっている。

荒い呼吸を整えるため、ミズノのマウスカバーを取り外す。その瞬間、いつもは感じることのない締め付けるような痛みを、ふいに胸に覚えたのだった。

むせ返るほど生き生きとした、草木の青い香り。夕方のゲリラ豪雨の水気を孕んで、しっとりとしめった空気。

濃密な夏の気配が、洪水のように押し寄せる。

ほのむらさきに暮れてゆく夏の夜、幸成は寄る辺なく立ち尽くしながら思い出した。

―“あの頃”も…。

“あの頃”もこんなふうに、夏の匂いがしていた。

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