彼女のウラ世界 Vol.5

「あなたに話があるの」5年振りに再会した女から突然の連絡。彼女が伝えたかったこと

「僕は、彼女のことを何も知らなかった…」

プロポーズした直後、忽然と姿を消した彼女。捜索の手掛かりは、本人のものだと思われるインスタグラムのアカウントだけ。

―彼女が見せていたのは、偽りの姿だった?

インスタグラムに残されていた、慎ましやかな彼女の姿からは想像もできない世界とは…。

◆これまでのあらすじ

2019年4月。プロポーズの数日後、前触れもなく消えた敏郎の恋人・明子。手掛かりは、彼女のものと思われるインスタグラムだけ。

そんな中、彼女のインスタに投稿がある。投稿時間は数分前。敏郎はなりふり構わず、その店に向かうのだった。


「すごい店だな…」

「@emodaw_sihrtoa」のストーリーにあった位置情報をもとに、敏郎は神楽坂の路地にある和食店『神楽坂 石かわ』へとたどり着いた。

無理矢理ついてきた香澄によると、神楽坂では言わずと知れた名店だそうだ。

―このドアの向こうには、明子がいるかもしれない。

敏郎は趣ある店構えに怖気づきながらも、意を決して店の扉を開けた。



「どうだった?」

店の前で待っていた香澄は、すぐ出てきた彼にその答えを察しつつも、儀礼的に尋ねた。

「軽く店内を見させてもらったけど…。いなかった」

「ま、投稿したときにその場にいるとは限らないからね」

「でも、いい店だったな…」

「だよね。私も仕事で行ったことあるけど、洗練された雰囲気でご飯も美味しかった。こんな素敵なお店、誰と行ったんだろうね」

香澄の言葉に何も言えなかったが、敏郎もまた同じことを思っていた。明子の同僚からの証言で判明した“嘘”が、いまだに敏郎の中でくすぶり続けていたからだ。

店を出てからあてもなく歩き、小道から神楽坂通りに出たところで、香澄は敏郎の腕を掴む。

「どこ行くの?ご飯行こうよ。せっかく神楽坂に来たんだし」

【彼女のウラ世界】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo