お試し夫婦 Vol.5

「この男、今なら落とせるかも…」女が誘惑に負けそうになった瞬間、起こった出来事

結婚相手を見つけるのは、決して容易なことではないだろう。

仮に運良く生涯のパートナーに出会えても、結婚生活が常に平和とは限らない。他人同士が夫婦になるのだから。

だけどもしも、AIがあなたにぴったりの相手を選んでくれたなら…?

ここは、2030年の東京。深刻化する少子化の打開策として、なんと政府は「お試し結婚制度」の導入をした。

3ヶ月間という期間限定で、見ず知らずの男と「お試し夫婦」生活を送ることになった真帆の運命は…?

◆これまでのあらすじ

AIが選んだ相手、健吾とお試し結婚することになった真帆。二人でお酒を飲んで距離が縮まったと思ったのだが…


「んん〜」

ベッドの中で猫のように伸びをして、私はゆっくりと身体を起こす準備をする。

引越し後初めての通勤だから早めにアラームをセットしたが、いつもより30分早いだけでとても眠い。

目をこすりながらリビングに行くと、健吾はまだ寝ているだろうと思っていたのに、すでに支度を終えてキッチンに立っていた。

「おはよう。早いね...」

そう言いかけたところで、昨晩の彼との会話を、不意に思い出した。

ー健吾さんって、今までどんな恋愛してきたんですか?

酔いに任せて、私はそんな踏み込んだことを聞いてしまったのだ。でも結局あのあと、そのままはぐらかされてしまった。

言いたくないことのひとつやふたつ、誰にでもあるだろう。突っ込んで聞きたいところをぐっと我慢したが、隠されると余計に気になる。

健吾の顔色を伺うも、何を考えているのか読めなかった。

昨日の出来事を思い返して、ぼんやり突っ立っている私に、彼はキッチンでテキパキと動きながら尋ねる。

「真帆さんは、朝ごはん食べるひと?」

「うん。作ってくれるの?ありがとう!」

そんな何気ないやりとりをする。だがこの生活も、昨夜の気まずくなった会話も、彼が本当はどう思っているのか見当もつかない。

この人は、かなりのポーカーフェイスなのだ。健吾は表情を全く変えることなく、こう言った。

「いえ。料理は僕が担当するって、決めたじゃないですか」

私は頃合いを見計らって、昨夜のことを謝った。

「あのさ…。昨日は余計なこと聞いちゃって、ごめんね。お互いのプライベートは干渉しない約束だったのに」

「いや、僕もはぐらかしてすみません。前の彼女とはいい別れ方をしなかったから」

さっきからあえてフランクに話しかけているのに、健吾は変わらず敬語を貫いている。

卵とベーコン、アスパラガスが自動で温度調整されながら、一気に焼かれ芳ばしい匂いが部屋中に満ちていった。

「今日、夕飯は外で食べてきます。その元カノに、どうしても会いたいと言われてて...」

ーえ!?元カノと?

急にそう言われ、私は思わず表情を曇らせた。

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