どんなに歳を重ねようが、好物には抗えない。それが幼き頃からのロングセラーであれば食する瞬間は誰しもが素に戻ってしまう。
名優もしかり。佐々木蔵之介さんは、鰻が大好物ということで渋谷にあるなじみの店に連れて行ってもらった。
旨い酒と鰻を求めて名優が辿り着いた一軒
すらりとした長身でジャケットを着こなす佐々木蔵之介さんが入っていったのは、暖簾に大きく〝鰻〞と書かれた店。
そこは神泉の交差点のすぐ近く、渋谷駅から徒歩10分という落ち着いたエリアに立つ鰻屋『瓢六亭』だ。
愛知や鹿児島など、国内の養鰻場から鰻を取り寄せ、身はもちろん頭から尻尾までをさまざまな料理にして提供している。
名物の鰻重は鰻本来の香りと滋味を生かすため、蒸さずに地焼きにこだわる渋谷きっての実力店である。
そもそも、渋谷は佐々木さんにとって長い間なじみのある街なのだ。
「23年前、まだ関西にいたときに初めて東京のプロデュース公演に出演させて頂いたのがパルコ劇場でしたし、シアターコクーンや青山劇場、NHKも渋谷。さらに所属事務所もずっと渋谷です」
お気に入りの店はいずれも中心から外れた静かなエリアにあり、立地上、客層も雰囲気のいい大人が多いという。
『瓢六亭 南平台』もそのひとつで、古民家風の趣ある内装と個室の多さにすぐに寛げたとか。
「今はつらい状況ですが、早くまた、普段どおりに寛ぎながら鰻を食べたいものですね」と、佐々木さんは静かに語り、撮影に向かった。